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「反米論」は百害あって一利なし

2012年12月05日 公開
2022年11月09日 更新

潮匡人(評論家/国家基本問題研究所客員研究員)

『「反米論」は百害あって一利なし』より》

「反米」が日本に益することはない

いまや日本は国難の最中にある。平成24年(2012年)11月現在、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺には連日、「海監」や「漁政」など中国政府の公船が押し寄せ、わが国の領海に侵入を繰り返している。

なぜ、こんなことになってしまったのか。結論から言えば、日米同盟が弱体化したからである。3年前、民主党に政権が交代し、自民党政権下で実施されていたインド洋上での給油活動が終了。さらに鳩山由紀夫総理(当時)が、普天間移設問題で「最低でも県外」と公言し、アメリカ大統領にも「トラスト・ミー」と大言壮語した。その結果は、読者ご案内のとおりである。日米同盟に深く刻まれた傷跡は、いまも消えていない。

驚くべきは、その後の展開である。当時、鳩山総理のブレーンと目された知識人が、いまも大手を振ってメディアで活躍する。マスコミの寵児と化す。全国の大型書店では、アメリカ陰謀論を振りまく新刊が平積みされ、ベストセラーとなっている。

そうした反米論者の責任もさることながら、今なお彼らを重用するNHK以下、マスコミの責任も重い。本文で述べるように、普天間基地へのオスプレイ配備を巡る報道をはじめ、連日連夜のごとく、国民の反米感情を煽っている。マスコミ世論には、低俗なアメリカ陰謀論が渦巻く。

日米が離反することで、得をするのは誰か。深く傷ついた日米同盟の惨状を見ながら、ほくそ笑んでいるのは誰か。日本のマスコミ世論を席巻する反米論は、日本の国益を害する。反米を合唱しても、何一つ、日本に益することはない。

(『「反米論」は百害あって一利なし』まえがきより抜粋)

 

オスプレイは本当に危険なのか

平成24年9月19日、日本政府は、防衛省と外務省の連名で「MV-22オスプレイの沖縄配備について」と題した報告書を公表し、こう「結論」を述べた。

「我が国におけるMV-122オスプレイの運用について、その安全性は十分に確認されたものと考える」「我が国におけるMV-22オスプレイの飛行運用を開始させることとする」

これを受け、翌々日の9月21日、アメリカ軍はオスプレイが一時駐機していた岩国基地(山口県)から試験飛行を実施した。拙著が発売される頃には、普天間基地での正式な連用が始まっているであろう。

だが、政府報告書の“安全宣言”とは裏腹に、いまも国民の不安は大きい。関係自治体も「配備ありきで進んでいる」(沖縄県知事)、「怒りを感じる」(宜野湾市長)など反発を隠さない。オスプレイは本当に「安全」なのか。

政府の報告書は、最近の墜落事故について「機体自体に問題があるわけではない」「人的要因によるところが大きい」「再発防止策は十分に図られる」などと結論した。

さらに今後も「(危険な)転換モードの時間を可能な限り短くする」、あるいは、500フィート(約150メートル)以上の高度で飛行する、原発や人口密集地域上空の低空飛行訓練は避ける、「可能な限り海上を飛行する」などを日米で合意したことを挙げ、安全性を強調する。

他方、9月21日の試験飛行では、オスプレイが下関市の市街地上空を飛行する姿が地上から視認された。テレビ各局がその光景を放送した。国民注視のもとでの初飛行なのだ。市街地は「可能な限り」避けるべきではなかったのか。たしかに、そうした疑問は残る。

これまで日米両政府は、被害総額が200万ドル以上の死亡事故など、重大な「クラスA」事故のデータだけを「事故率」として公表し、「安全性の記録を有している」と説明してきた。

だが以上の数字にはカラクリがある。案の定、7月20日付『朝日新聞』朝刊が一面トップで「オスプレイ事故58件」とスクープ報道した。御多分に漏れず、NHKも「比較的程度の軽い事故が起きる頻度は、海兵隊の航空機の平均を大幅に上回っている」と大きく報じた(7月26日)。実際、より被害が小さい「クラスB」の事故率は、海兵隊の平均を上回る。「クラスC」に至っては平均の2倍を超える。

だが政府の報告書は、これらの指摘を「機体の安全性を示す指標としては不適切」と退け、改めて「低い数字」と断定した。たしかに、これでは「配備ありき」の印象を与えかねない。

 

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