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いじめ対応には政策の優先順位づけが不可欠

2012年09月19日 公開
2023年09月15日 更新

亀田徹(政策シンクタンクPHP総研教育マネジメント研究センター長)

 文科省がいじめ問題に関する取組方針を発表しました(「いじめ、学校安全等に関する総合的な取組方針」平成24年9月5日)。

 いじめ問題の施策が30項目も掲げられており、考えられるかぎりの施策を推進しようとする文科省の姿勢が表れています。幅広く施策を推進することで、一定の効果が期待できるでしょう。

 取組方針の全体は、「いじめ問題」、防災や通学路に関する「学校安全」、武道に関する「体育活動」の3つの内容に分かれており、それぞれ「基本的考え方」と「アクションプラン」が示されています。

 いじめ問題のアクションプランでは、教職員定数の増など、確実に実行してもらいたい施策が並んでいます。

 とくに、「児童生徒一人一人が安心でき活躍できる教育活動(授業づくりや集団づくり等)の在り方について研究」するとの施策は重要です。いじめの背景には子どもどうしの健全でない人間関係があるからです。子どもたちの集団づくりや子どもと教師との信頼関係づくりが、いじめの未然防止や早期対応だけでなく、授業の質の向上にも資するはずです。

 一方で、この取組方針には、国の役割に関して“足りない点”と“行き過ぎの点”とがあります。

 足りない点とは、政策の優先順位づけです。いじめ問題については、従来から行政においても学校においても対応を進めてきました。同時に、学力向上や体力向上、キャリア教育などさまざまな課題にも対応しているのが実態です。

 人・時間・お金という資源は有限ですから、どこに重点的に資源を配分するかを明らかにしないと中途半端な対応になりかねません。政策の優先順位をつけ、学校教育に関する基本方針を打ち出すことが国の役割ではないでしょうか。

 前述の施策の表現を借りれば「児童生徒一人一人が安心でき活躍できる教育活動(授業づくりや集団づくり等)」を展開することを教育政策の最優先に位置づけるべきと考えます。人間関係や信頼関係は学校教育の基本だからです。

 行き過ぎの点とは、国による関与の強化です。個別のケースについて、一つひとつ国が対応するのは物理的に困難です。もし本当にするのであれば、単に報告書を自治体から送ってもらうだけでなく、直接現場に赴き、関係者とじっくり話し合いながら時間をかけて対応していく必要がありますが、それが可能なのか疑問を抱かざるを得ません。

 国の役割は、個別のケースに直接対応するのではなく、個別のケースに対する自治体の対応力を高めることではないでしょうか。教育委員会の指導主事の力量向上システムを築くことや教育行政制度を見直すことが国の仕事です。

 そうした役割分担を明確化し、責任の所在をはっきりさせる。それが結果として効果的かつ現実的な課題解決につながると考えます。

 <研究員プロフィール:亀田徹>☆外部リンク

 

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