2024年06月26日 公開
夜の浜松市街
人口減少や財政難に直面する地方自治体にとって、持続可能な行政運営は喫緊の課題だ。本記事では、前浜松市市長で、現在は静岡県知事を務める鈴木康友氏が実行した「定員適正化計画」による1200億円という驚きの財政削減と、職員の働き方改革の実現について、書籍『市長は社長だ』より紹介する。
※本稿は、鈴木康友著『市長は社長だ』(PHP研究所)から一部を抜粋・編集したものです。
職員定数の適正化は、行革のなかでも重要なテーマの一つです。定数を削減することは、そのまま職員数の削減につながりますので、人件費が抑制されます。さらに人件費の抑制効果は毎年続きますので、行革効果は絶大です。
職員数の削減でもう一つ重要なことは、余分な仕事がなくなることです。職員を減らして、仕事の量もそのままであれば、いずれ歪みが生じます。しかし決してそうはなりません。必ず無駄な仕事はなくなりますし、事務なども効率化されます。
事務量に対して、これだけの人数が必要だという絶対的基準はありません。もちろん数だけの問題ではなく、一人ひとりの職員の能力の差もありますので、全く遊びのない組織をつくることは不可能ですが、相当程度スリムにすることはできると思います。
アメリカの企業などで時折、万単位のリストラをすることがありますが、それでも会社は回ります。余剰人員の削減に加えて、同時に大胆な業務の見直しや事務の見直しを実施しているのだと思います。
定員適正化といっても、アメリカの企業のように、現役職員をリストラすることはできません。どうするかと言えば、毎年一定数退職者が出ますので、その数と新規採用者の数を調整して職員定数を削減していきます。ある年だけ一気に採用を減らすこともできませんので、市では、「定員適正化計画」というものを作成し、計画的に定員を削減してきました。
その結果、2005年度から2020年度までの間に、6439人から5120人まで、1319人の定員を削減しました。行革審の答申が5000人体制ですので、もう少しで答申目標を達成できるところまできています。財政効果額は、累計で約1200億円の削減効果がありました。
今後はデジタル化やRPA(ロボットによる業務自動化)などの先端技術の活用によって、いっそう事務事業の効率化が図られていきますので、さらなる定員の削減が可能になると思います。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の成功のためには、CX(コーポレート・トランスフォーメーション)が必要だ、つまり企業の体質を根本的に変えなければ、デジタル化は成功しない、と喝破したのは、私の尊敬する冨山和彦(株式会社経営共創基盤グループ会長)さんです。
私はそこからヒントを得て、自治体のデジタル化成功のためにはLGX(ローカル・ガバメント・トランスフォーメーション)が必要である、と主張しています。自治体も、従来の発想や体質を大転換させなければなりません。
定員についても、デジタル化とともに大胆な見直しが必要です。極論すれば今後、事務作業はすべてAIやRPAが行い、人間は企画や市民サポートのような生産的な仕事に特化する時代が、すぐそこまで来ているのではないかと思います。
そうなれば、従来の定型作業をこなす事務型の仕事から、答えのない発想型の仕事が中心になりますので、自ずと職員の意識や発想も切り替えていかなければなりません。それが私の主張するLGXです。
更新:11月21日 00:05