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「市長は社長だ」と訴える前浜松市長 鈴木康友氏が初の著書で振り返る改革の軌跡

WEB Voice編集部

鈴木康友

16年間にわたって浜松市長を務め、2024年5月の静岡県知事選挙で見事当選を果たした鈴木康友氏。同氏が自らの市政を振り返りつつ、「黒字市政」を実現した考え方や具体的手法を明かす初の単著『市長は社長だ 浜松市が1314億円の借金を返せた理由』が発売される。

 

「市長在任中は、常に経営者としての視点で市政を邁進」

松下政経塾で学んだ鈴木氏は、松下幸之助氏の教えを踏まえ、「市長在任中は、常に経営者としての視点で市政を邁進してきた」と本書のまえがきに記している。若手議員や経営者の中には、「社長」と呼ぶ人もいるほど徹底しているそうだ。

鈴木氏が市長に就任した当時の浜松市は、人口80万人を超える政令指定都市だったが、市の面積の半分を過疎地域が占めており、巨額のインフラコストを必要としていた。そこで鈴木氏は「市の経営者」として財政計画を策定し、出費削減と税収増に着手。その結果、2007年に5,632億円あった市債の約27%にあたる1,314億円が削減され、2014年には財政の健全性を計る「将来負担率」の黒字を達成したのだ。

 

5つの経営方針が支えた施策の数々

社会課題が複雑化する中、鈴木氏を支えたのは

①将来世代に対して責任を負う
②税金の無駄遣いをしない
③「やらまいか精神」の発揮
④巧遅より拙速
⑤人を活かす

という、5つの経営方針だった。

「あれこれ悩む暇があったらやってみよう」という、遠州地方独自の進取の気質である「やらまいか精神」をはじめとするブレない指針があったからこそ、「日本発の行政区再編」「320社を企業誘致した産業政策」「出世の街はままつプロジェクト」などの施策が実現。その健全な財政は、国際的な格付け機関・ムーディーズにより、自治体の中で最も高い評価を得ている。

 

「独自の人脈」が強みに

施策実現の上で、鈴木氏の強みの1つになったのは「独自の人脈」だという。本書では、衆院議員時代から親交を重ねる菅義偉・前内閣総理大臣とのエピソードや、川勝平太・前静岡県知事と10年かけて完成させた「一条堤」建設秘話なども綴られている。

巻末にはスズキ株式会社代表取締役社長の鈴木俊宏氏との対談も収録。ライドシェアや自動運転プロジェクトから、浜松市が国内産業や社会に与える影響までを、熱く語り合っている。

「スピードとアイデア、そしてアジャイル(機敏な)思考な点でも企業経営に似ている」と語る鈴木氏。同氏の激動の16年間の記録には、リーダーの心得からマネジメントのポイント、地域活性化のヒントも満載だ。PHP研究所は「自治体運営に携わる方々だけでなく、ビジネスパーソン全般に参考にしていただきたい一冊だ」と話している。

 

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発売日:2024年06月06日
価格(税込):880円

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