2022年05月18日 公開
新型コロナウイルスの感染拡大により、自宅で過ごす時間が増え、出会いの場も限られるようになり、恋人や結婚相手を探すため、マッチングアプリに登録する人が急増している。
中には真剣交際の末、結婚をしたカップルも多く見受けられるが、一方で「いい出会いがない」「詐欺の被害にあった」という、話も頻繁に見聞きする。
新たな出会いのツールとして急速に普及している「マッチングアプリ」と、私たちはどのように付き合っていくべきなのだろうか。
「パラサイト・シングル」「格差社会」「婚活」などの言葉を世に広めた社会学者が、日本社会における「出会い」の変化と、マッチングアプリの位置づけについて分析する。
※本稿は『Voice』2022年6⽉号より抜粋・編集したものです。
新型コロナ禍が依然として収まらないなか、「マッチングアプリ」に注目が集まっている。ただ、マッチングアプリという言葉が「恋人や結婚相手探しのネットを利用したサービス」という意味で使われるようになったのは最近のことであるし、和製英語でもある。
『朝日新聞』に最初に登場するのは、2018年2月27日(夕刊)で、わざわざ「交流アプリ」と註がついていた。
ところが、新型コロナ禍による外出制限も追い風になったのか、従来の出会い系といわれるサービス業者だけでなく、結婚情報サービス事業者、自治体関係の事業者もネット上での結婚相手紹介に乗り出すようになった。
もはや、マッチングアプリといえば、パートナー探しツールの代名詞的存在になっている。昨年、マッチングアプリに関する国会議員勉強会が発足し、私も呼ばれてお話をさせていただいた。
マッチングアプリの利用者数や、そこで出会って結婚するカップルも増えている。
たとえば今年4月、51年ぶりに司会者が変わった長寿番組『新婚さんいらっしゃい!』でも、マッチングアプリで出会ったというカップルがときどき登場するようになった(2021年1月放送、20歳差カップルなど)。
本稿では、マッチングアプリによる出会いを、日本社会における出会いの変化のなかで位置づけてみたい。
恋人や結婚相手との出会いのパターンはさまざまである。『新婚さんいらっしゃい!』では、番組が開始されてしばらくのあいだは、司会の桂三枝(当時)さんは、新婚カップルに「見合いですか、恋愛ですか」と聞いていたが、いつしか「奥さん、きっかけは」と聞くようになった。
それこそ昔は見合いが多かったが、最近は高齢の方が「ネットのブログを見つけて、連絡をとって会いに行った」というケースも放映された。
私も長年、多くの夫婦にインタビュー調査をしてきたが、高齢者夫婦調査では「戦後すぐ、親が決めた相手で、結婚するまで二人きりで話をしたことがなかった」というケースもあれば、国際結婚調査のなかで「飛行機でたまたま隣の席の外国人から口説かれ、付き合って結婚した」という日本人女性に話を聞いたこともある。
国立社会保障・人口問題研究所が1940年からほぼ5年おきに行なっている「出生動向基本調査」では、夫婦の「出会いのきっかけ」についての項目がある。
2015年の調査までは、(1)学校で、(2)職場や仕事の関係で、(3)幼なじみ・隣人関係、(4)学校以外のサークル活動やクラブ活動・習いごとで、(5)友人や兄弟姉妹を通じて、(6)見合いで(親戚・上役などの紹介も含む)、(7)結婚相談所で、(8)街なかや旅行先で、(9)アルバイトで、(10)その他の10分類が使われていた(2015年では、その他を再集計して、(11)メディアを通じて、(12)結婚情報サービス、(13)親や親戚を通じて、が報告書に掲載されている)。
それが、昨年度の調査からネットなどでの出会いも選択項目に加えられたと聞いている(結果、2022年4月現在未公表)。
同研究所の分析では、(6)と(7)を合わせて見合い結婚、その他を恋愛結婚と分類している。1960年代半ばに恋愛結婚が見合いを上回ったというのは、このデータに基づいている。
私は、出会いのパターンを大きく、「自然な出会い」、「偶然の出会い」、「積極的な出会い」の3つに分けている。
「自然な出会い」とは、幼なじみ、学校、職場、趣味のサークルなど、身近にいる人を好きになり、交際を始めるというもの。
「偶然の出会い」とは、旅先や街なか、バーなどで、素性をよく知らない人とたまたま出会って好きになり、交際が始まるというもの。
「積極的な出会い」とは、自分から交際相手、結婚相手を積極的に見つけにいくものである。これが、私のいう「婚活」(もしくは恋活)である。見合いでも、友人の紹介でも、合コンでも、結婚相談所でも、そしてマッチングアプリであっても、最初からお互いに交際(恋人、結婚)相手候補として相手と会うので、「積極的出会い」に含めることにする。
更新:11月21日 00:05