2022年05月18日 公開
マッチングアプリの特徴の二つ目は、社会的な魅力格差が顕著である点だ。
男性にとっては学歴や職業、収入、女性にとっては容姿や年齢による「相手からの選ばれやすさ」の格差を解消するものではなく、むしろ際立たせる出会い方でもある。現実問題として、プロフィールの収入が低かったり、定職についていなかったりする男性や、年齢が相対的に高い女性は選ばれにくい。
もちろん、その状況に対して結婚相手紹介サービス業も対応を試みている。たとえば「AI婚活」といって、AI(人工知能)が根拠を示さずに相手を紹介してくれるサービスも出ている。また、収入や年齢をアプリ上に表示せず、性格や趣味でお互いに選び合うというサービスを行なう会社もある。
三つ目は、「もっといい人がいるかもしれないシンドローム」と「がっかり効果」だ。マッチングアプリでは多くの人と出会えるため、マッチした人と出会える確率を高める半面、一人になかなか決められないという事態が起こる。この状況を私は、「もっといい人がいるかもしれないシンドローム」と名付けた(拙著『結婚の社会学』丸善)。
また、アプリで見た写真が好みだと思って選んだにもかかわらず、実際に会ったら想像していた人と悪い意味で違っていたということもよく起こる。これを、イスラエルの社会学者であるエヴァ・イロウツ(Eva Illouz)は「がっかり効果」と呼んだ(Illouz,Cold Intimacy)。前述の吉原真里氏の著書でも、たくさん会えても付き合わない人が多かったと書かれている。
マッチングアプリにはこれらの問題点があるにしろ、自然な出会いが衰退し、偶然の出会いが好まれないとすると、結婚や交際相手を求める人は「積極的な出会い」に頼らざるをえないだろう。
またマッチングアプリには、いままで「自然な出会い」では関わることができなかった人(特殊な趣味や性的志向を含む)と出会えるという大きなメリットがある。若者というより中高年の利用が近年増えているのも、身近に独身中高年と出会う機会が少なかったからである。
スマホの普及とパートナーがいない人の増大とともに広がったマッチングアプリの行く末について、これからも注視していきたい。
更新:11月22日 00:05