Voice » たばこと人生のポートフォリオ
2022年05月10日 公開
――喫煙はきわめて個人的な嗜好品で、そのときの健康状態にもよるでしょうが、今村先生のように病気になっても吸う、という方もいます。嗜好品の是非に口出しする人が多すぎませんか。
【今村】まあ、時代の流れ的にしゃあないなとは思ってる。東京都では路上喫煙が条例で規制されているので、主な喫煙所は全部メモったり、頭の中に記憶しています。
飲食店の規制も改正健康増進法の施行以降、厳しいから、吸えるお店を秘書に調べてもらうこともある。それくらい喫煙者の肩身は狭くなってるけど、ぶっちゃけ地方は東京都内と違って広いスペースがあるから、よいか悪いかは別にして、危険な歩きたばこでなければ空き地とか、田舎なら田んぼのあぜ道とかでみんな吸ってはる。
で、どちらがいいかといえば、僕はかえって東京都方式のほうがいい。喫煙所があって、そこで吸っている分には、誰にも何もいわれへんから。地方に行くと人の目が気になるし、喫煙所が少ないのでどこで吸っていいかようわからん。いまくらい顔が知られるようになると、隠れて吸うのを見られたら嫌な気分になるから、いっそ「喫煙所、つくってくれ」と思う。喫煙所が多いほうが喫煙者も気楽で、棲み分けるのがええんちゃいますか。
――また税収の側面から見ると近年、成人の喫煙率は20%を切る一方、たばこ税の税収はほぼ2兆円で推移しています。一般会計の税収は約60兆円ですから、喫煙者の税収貢献度は高い。
【今村】税収と財政について、よく「喫煙者にかかる医療費の負担が増加しているので、トータルで見たら赤字だ」といわれます。けど、本当は寿命との関連で調べないとわかりません。不確かなことで糾弾されても、とは思う。
でも、僕は「医療費の増加分も込みで納税したら、文句ないやろ」という立場です。たばこ税だけでなく所得税に消費税、住民税、事務所の法人税も加えた納税総額で明らかなプラスを出して、胸を張ってたばこを吸えるほど働こうやないか、と。いまは長者番付(高額納税者公示制度)の発表がないけれど、「こんだけ税金払って社会に貢献しているから許してほしい」といいたいね。
――少なくとも1990年代ごろまでは、喫煙に目くじらを立てるような社会ではありませんでした。
【今村】僕はたばこを礼賛するつもりはないし、副流煙で他人に迷惑をかけへんようにしたほうがいいに決まってる。ただし直接的な人への悪影響に関していえば、飲酒に比べたらずっと少ないと思います。
飲酒運転や暴力など、アルコールによる酩酊や錯乱のほうが社会に与える害は大きい。世間の非難が一方向に集中していくのは、よろしくないんじゃないか。たばこが非難を浴びるのは害の多寡より、単純にお酒を飲む人が多数派だから。数の暴力みたいに感じるときもありますよ。
――喫煙者からすると納得できません。
【今村】そこで一つ、提案がある。いま全国に限界集落(高齢化率が50%を超え、共同生活の維持が困難で消滅しかけている集落)があるじゃないですか。そこで働き盛りの世代を呼び込むため、「全面喫煙OKの村」にしてしまう。どこで吸っても構わない、愛煙家のための村。たばこ税の半分・約1兆円は地方税なので、税収だってぐんと増えます。
現役世代が移住してくるとその他の税収も上がるから、村の財政が潤って集落が活性化するでしょう。どの施設やお店にもたくさん灰皿が置いてあって、路上喫煙も歩きたばこも許される。僕やったら絶対移住しますね。煙たい村やけど(笑)。
――評判になりそうです。
【今村】喫煙者はお酒を飲む人も多いから、飲食店などの盛り場も発展して活気ある大人の集落になるはず。ましていまのご時世、会社員も出勤しなくて済むリモートワークや、フリーランス的な働き方も広がっているから、喫煙者がストレスを感じない自治体があったらええなと思う。非喫煙者は「あの村には近づかんとこ」ってなるかもしれんけど、そこは棲み分けやね。
もう一つ、たばこに関して思うのは「たばこを吸わない人は収入が高い」といわれてますやん。
――会社のエグゼクティブ層は非喫煙者の割合が高いとか、禁煙は出世の条件だとか。
【今村】あれ、ほんまかなと思う。たしかに企業のエグゼクティブ層は非喫煙者が多いみたいですけど、僕の周りにいる中小企業の社長さんとか、独立後に突出して稼いでる人を見ると、むしろ喫煙者が多い印象があります。
――実感として、フリーランスの喫煙率はサラリーマンより高いと思います。
【今村】せやろ。高給サラリーマンの勤め先は外資系企業なんかが多く、「喫煙者は自己管理ができていない」という印象が広まっているのが理由の一つ。あと、上場企業はコンプライアンス(法令順守)や世間の風潮に合わせた社内の締め付けが強い。だから組織で出世しようとしたら、たばこを遠ざけないといけない。
一方で、個人事業主や中小企業の社長は自己決定の世界やし、他人や世間に個人の生き方をとやかくいわれたくないから独立している人が多い。自由気ままに生きようとする半面、組織に頼れないので人知れずストレスが溜まっている。年商数十億円の経営者を見て、そう感じることがありますね。彼らは同調圧力や外圧は関係なしに、吸うか吸わへんかを自分で決められる立場だから、結果的に喫煙者比率が高い気がします。
更新:11月25日 00:05