お笑い芸人や音楽プロデューサーとして活躍する古坂大魔王さん。2016年にプロデュースしたピコ太郎のYouTube動画「Pen Pineapple Apple Pen(PPAP)」は世界的な話題となった。
ただとりわけ音楽や映画の世界では近年、韓国の台頭も著しい。お笑いや音楽の分野でグローバルに活動する古坂さんに、日本のエンタメが逆襲するための戦略について語る。(聞き手:Voice編集部・中西史也)
※本稿は『Voice』2022年2⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。
――古坂さんは音楽のプロデューサーとしてもグローバルに活躍されています。エンタメにおいて日本と世界の「壁」を感じることはありますか。
【古坂】つねに感じるところです。日本人には耳の痛い話ですが、たとえばいま話題の韓国のエンタメは、「世界と戦う」意味において、その力は凄まじい。韓国はエンタメにかぎらず、さまざまな分野で「国内の市場だけではやっていけない」という危機感を何十年も前から抱き、世界を見据えた戦略を国策として進めてきました。エンタメで言えばBTS(防弾少年団。韓国の七人組男性ヒップホップグループ)はK-POPの枠にとどまらず、いまや世界を代表するスターです。
その結果、韓国に対する世界の見方までも変わってきています。僕が20歳くらいのときに海外に足を運んだ際は、外国人から「Are you Chinese?」と聞かれることが多かった。それが2017~19年頃にピコ太郎さんを連れて30カ国ほどを回ったときには、すでに「Are you Korean?」と尋ねられることが増えたように感じたものです。やっぱり、K-POPや映画を中心とする韓国のカルチャーが世界に浸透している影響もあるんじゃないかな。
――日本のエンタメは世界に逆襲できるでしょうか。
【古坂】漫画・アニメ『進撃の巨人』に出てくる巨人のように、一気に壁を壊すのはさすがに難しいでしょうね。僕は「鍾乳洞」戦略でいくしかないと思っているんです。水滴が落ちて少しずつ鍾乳洞の形ができていくように、海外の良い事例を参考にして蓄積しながら、日本人のマインドを徐々に変えていくんです。
たとえば、日本ではいまだにテレビやCDの力が強くて、「地上波で放送された」「CDが100万枚売れてオリコンチャート1位を獲得した」という具合に、ある種の権威になっています。誤解してほしくないのは、僕はテレビやCDが大好きだし、その文化は決して絶やしてはいけないということです。
でも同時に、世界は映像も音楽も配信の流れに移り変わっている現実からは目を背けてはいけません。クリエイターはもちろんのこと、コンテンツを受け取る側もさまざまなメディアを通じて世界の映像や音楽に触れることが、日本のエンタメ文化をより豊かにし、やがて世界と戦えるようにするのではないでしょうか。
更新:12月26日 00:05