2021年07月19日 公開
2023年07月12日 更新
僕が弁護士として顧問先へのアドバイスで気を遣うのは、不祥事が起きた後の最初の謝罪・反省の意の表し方です。謝罪・反省というのは、感覚的に捉えられるからこそ難しい。
人間の感覚ですから、ちょっとした態度や振る舞い、声のトーンや表情、目の動きなどで「こいつは本心から反省していない」と世間に受け取られてしまうことがあります。準備も不十分なまま記者会見に臨み、最初に不用意に強気に出てしまって、さらに批判の嵐を食らうというパターンが少なくありません。
ある案件で大阪市役所のある部局が、メディアから突っ込まれたことがありました。担当部局は「間違っていない」と頑なに主張していましたが、僕は手続的正義の手順を踏もうと考え、市長直轄チームのメンバーたちを呼んで、チームにはメディアの立場に立って徹底的に担当部局の問題点を追及するように指示をしました。
そして、僕の目の前で、チームと担当部局に議論を行わせました。その議論を聞いていると「やはり、これは担当部局が間違っているな」ということが腹に落ちました。
あれだけ頑なになっていた担当部局も、その議論を踏まえると、自分たちが間違っていたという結論になっても仕方がないという雰囲気になりました。
その後、僕は緊急記者会見を開いて、僕と担当部局の最高幹部が並んで「この点が間違っていましたので、修正します」と発表しました。間違いに対しての批判は一時ありましたが、それを認め修正したことについては、府民の皆さんからむしろ評価をいただいたと感じています。メディアからの追及もいったん収まりました。
謝罪や訂正によって、府庁・市役所に対する府民・市民からの信頼が高まると同時に、部下職員からの幹部に対する評価も高まったと思います。組織で立場が上の人ほど、なかなか間違いを認められないものです。しかし、立場が上になるほど、間違いをすぐに認めたほうが、組織全体のモチベーションが上がり、組織が強くなります。
僕は、間違ったことを押し通すよりも、組織内において「うちの知事は間違っていたら認めるんだ」という評価を得たほうがいいと考えていました。
間違いを認めずに、ごまかしたり、情報を隠したりするのは最悪です。僕の経験では、間違いを認めて、事実を先に出してしまったほうが、批判はむしろ収まります。
謝るときには、世間が「そこまでやるか!」と思うぐらいの「姿勢・気迫・意気込み」で謝らなければ効果はありません。間違ったことを素直に謝るのは、事後挽回策として最も重要なものです。
更新:11月22日 00:05