2020年07月13日 公開
2022年02月22日 更新
日本で感染流行が爆発せず、抑えられた3つ目の理由として、欧米と日本での習慣および行動様式の違いを挙げたい。
これについてはさらなる調査分析が必要だが、世界四大陸で生活をしてきた自分には、習慣や行動が国や地域によってどれほど違うか、それが健康にいかなる影響を及ぼすのか、嫌というほど見せつけられてきた。
新型コロナ感染のリスクが高い濃厚接触の定義の1つが、「感染者との距離が1メートル以内で、マスクなどで口元が覆われない状態で15分以上会話をすること」である。
私がブラジルで働いていたときは、朝オフィスに行くと同僚全員と握手やハグ、頬を突き合わせるキスをし、至近距離で長い時間会話をするのが習慣だった。それをしなければブラジル人との関係性が崩れてしまうほど、大切なルーチンだったのである。
彼らはカーニバルでなくとも、家族や友人同士で密着してよく踊る。最近のブラジルでの感染爆発は、濃厚接触が日常的なこの国では必至だったのかもしれない。
イタリアやスペインの友人もブラジルと似たような濃厚な接触を好み、ケニアでも握手をしたまま至近距離で長い挨拶をしないと本題に移れないことが多かった。家庭でも夫婦の会話が少なく、濃厚接触が少ないと言われる日本とは、かなり異なった状況といえる。
さらに、日本では手洗いやマスク着用は日常的に行なわれる。ときに神経質すぎるのではと思うこともあったが、海外ではトイレのあとでも手を洗わず、咳をしているのにマスクをしない国も多い。
日本では、高齢者介護施設でのスタンダード・プリコーション(標準予防措置策)、つまり日常的にマスク着用や手洗いなどの感染予防を徹底しているが、欧米にはマスクも消毒液も備えておらず、また職員が感染予防の研修を行なっていない施設も少なくない。
新型コロナでは、感染者が症状の出現前に、また無症状のまま感染を広げる場合があるため、先述のように感染予防を怠るとリスクが高まる。感染リスクの低減につながる習慣が国民にどれほど浸透しているかは、重要なファクターと考えられる。
国民の行動様式において、欧米で都市または全土の封鎖を強行したのは急激な感染拡大阻止のためだが、自粛を呼びかけても国民が従わなかったという背景もある。
外出禁止として罰金を課しても守らない人びとが多く、パリでは外出禁止発令の翌日の1日だけで4000人以上、2週間で約35万人に罰金の支払いが命じられた。
その金額もはじめは35ユーロ(約4000円)だったがのちに135ユーロ(約1万6000円)に上がり、何度も違反を繰り返せば、最大3700ユーロ(約44万円)、最大6カ月の拘禁刑を科せられることとなった。
一方の日本はどうだったか。もちろん、要請でも強制でも従わない人はどこにでもいる。実際に、緊急事態宣言発令後も、繁盛したパチンコ店やラーメン店があると聞く。しかし全体として見れば、同調圧力などにも押され、最終的に日本の要請は欧米の強制に似た効果があったようだ。
このほかにもさまざまなファクターがありそうだが、いずれにせよ、日本は感染爆発や医療崩壊を防ぐことができた、と評価できるだろう。
更新:11月22日 00:05