2019年11月12日 公開
2022年07月08日 更新
写真:吉田和本
GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄の行方が議論を呼んでいる。韓国は近頃、アメリカに配慮してか日本に擦り寄っているが、泥沼の日韓関係は改善するのか。第五代統合幕僚長として自衛隊を指揮した河野克俊氏と、外交・安全保障が専門の村田晃嗣氏が徹底討論。
※本稿は『Voice』(2019年12月号)河野克俊氏&村田晃嗣氏の「『専守防衛』を再考せよ」より一部抜粋、編集したものです。
【河野】 日韓関係は「戦後最悪」といわれていますが、両国の関係はこれまでも不健全な状態でした。韓国がつねに歴史問題をもち出してくるのに対し、日本は自主規制をしてきた。
しかし、言うべきことを躊躇してはなりません。一時的に摩擦は起こるでしょうが、中長期的な観点から日韓関係を展望すれば、乗り越えなければならない壁です。
統合幕僚長を務めた私の立場からいえば、昨年10月に韓国が自衛艦旗の旭日旗を掲揚しないよう求めたことや、同年12月のレーダー照射問題は決して看過できません。
もちろん、われわれは韓国側の不条理な要求に屈することはありませんでした。
現在、韓国国内では「文在寅政権の反日は行きすぎではないか」との声が噴出していますが、日本側が毅然とした対応をみせたことで、こうした反応が出てきたのだろうと思います。
【村田】 日韓で摩擦が生じていますが、大きな視点でみたとき、韓国がいま岐路に立っている側面もあるでしょう。
韓国は日米と共に海洋国家として生きていくのか、それとも中露と組んで南北統一を前提とした大陸国家として生きていくのか。文在寅政権は後者を選びかねないのが現状です。
もう1つ、日韓の力関係の変化も影響を及ぼしています。戦後長らく、経済的に日本のほうが圧倒的に強かったのが、いまはある程度フラットになりつつある。
韓国では対中依存度が高まり、相対的に日本の重要性が低下していることもあるでしょう。
こうしたパワーバランスの変化について、日本は十分な配慮と理解をもち併せているという姿勢を、国際社会に対して示す必要があります。
文政権はリアクションを起こさないかもしれませんが、韓国の一部の世論が好意的に動く可能性があるのではないかと思います。
また、海賊対策のような、北東アジア以外での日韓協力は、粛々と継続していく必要があるでしょう。
更新:11月22日 00:05