2019年08月14日 公開
――新古典派エコノミストの多くは「最低賃金を上げれば失業者が増える」と主張しますね。彼らの考えは間違っていた、ということでしょうか?
【アトキンソン】 そのとおりです。彼らの勘違いは、「労働市場が完全に効率的である」という大前提をもっていることです。
すなわち、労働力の価格は市場で隔たりなく評価されており、1人の労働者の労働価格は1つに決まる、と。しかしその前提は近年、覆されています。現実の労働市場は完全に効率的ではないのです。
その理由としては、①仕事や雇用に関する情報が不完全なため、高い収入を得るための可能性を生かせないこと、②転職のコストが障害になっていること、③労働者個人の事情により、自分の潜在能力より収入が低い仕事を選んでいること、が挙げられます。
③はとりわけ女性にいえることです。出産や育児によって労働市場での立場が弱くなり、本来もっている生産性に比べて低い給与で働く構図は容易に想像ができるでしょう。
――子供の面倒を見る以外にも、親の介護などで仕事をセーブするケースもあるでしょうね。
【アトキンソン】 新古典派のエコノミストたちは、「労働市場は効率的」という”旧来の常識”から抜け出せていない。
日本は過去にも最低賃金を引き上げていますが、そのことで失業率が上がったことを示すデータは存在しません。
更新:11月23日 00:05