2019年07月24日 公開
2022年05月25日 更新
ではどうしたらよいのだろうか。年金だけでほぼ暮らせる水準まで給付額を大幅に引き上げられるのなら、最善である。ベーシックインカムを“魔法の杖”のように語る識者も少なからず存在する。
残念ながら、これは困難だといわざるをえない。基礎年金の最低保障機能の強化については、自民党政権も民主党政権も検討をしたが、財源の壁で頓挫した経緯がある。
ましてや巨額な費用を必要とするベーシックインカムなど、とても現実的な政策とはいえない。
では、金融庁の審議会の報告書が勧める資産運用はどこまでうまくいくのだろうか。「どの金融商品がお薦めか」といった特集記事も目立つ。
むろん「資産寿命」を延ばすことを否定するつもりはないが、資産運用はそれ相応のリスクを伴う。退職金がなくなるぐらい損をしたという話もあるように、誰もがうまくいくわけではない。
そもそも元手がないという人も多い。むしろ、今後はそういう人が増えていく。これから高齢者の仲間入りをしていく現在の40代、50代と現在の年金受給世代とを比べると現役時の雇用形態は大きく異なっている。
団塊ジュニア世代の前後は就職氷河期にあったり、勤務先企業の倒産やリストラによって不安定な雇用に追いやられたりした人が少なくないのだ。
正規雇用であっても賃金上昇が抑え込まれて、十分な老後資金を貯めることなく定年を迎える人も続出しそうである。ましてや非正規雇用で年金保険料をしっかりと納めてこられなかった人は低年金や無年金となる。
金融庁の審議会が唱えるような「資産寿命」の延長を、リアリティーをもって考えられる人ばかりではない。
年金給付額の引き上げも、資産運用による自助努力にも限界があるならば、発想を変えざるをえない。
更新:11月23日 00:05