2019年06月11日 公開
2019年06月13日 更新
それでは、90年代に入って、日本的雇用慣行のデメリットがメリットを上回るようになるほど、急激にグローバル化が進んだのでしょうか。グローバル化をどのような指標で見るかは難しい問題ですが、ここでは、世界の輸出額と直接投資額およびそれらの対GDP比で見てみましょう。
図表6─2は、90年代の世界の輸出額は85年以降の趨勢線上に沿って増加しており、90年代に入って急激に増加し始めたわけではないことを示しています。
世界の輸出額がそれまでの趨勢線を離れて急激な増加に転ずるのは、02年以降で、日本の輸出額も同年以降、急増しています。
図表6─3は、90年代に入って、世界の輸出額の世界全体のGDPに対する比率は80年代よりもかなり上昇しましたが、90年代前半の日本の輸出額の対日本のGDP比率は80年代よりも低下したことを示しています。
この低下が生じたのは、GDPデフレーター(物価変動指数)の前年比が94年まで低下しつつもプラスを維持したのに対して、輸出デフレーターの前年比は91年から94年までマイナスが続いたためです。
このように、91年以降94年まで輸出デフレーターの前年比がマイナスになったのは、図表6─4に示されているように、91年〜95年まで急速な円の名目実質実効為替レートが上昇した(円高になった)ため、日本の輸出企業が円建て輸出価格を引き下げることによって実質実効為替レートを低位に安定化させようと努力し、名目の円高によって引き起こされる輸出の減少を食い止めようとしたからです。
次に、90年代に入って、直接投資がどのように変化したかを見てみましょう。
図表6─5は、90年代前半の直接投資のGDP比は、世界についても、日本についても、80年代とそれほどの差がないことを示しています。
以上から、90年代前半に、日本企業が、日本的雇用慣行が原因でグローバル競争から脱落し始めたという説は妥当ではない、と考えられます。
図表6─5からわかるように、80年代以降、企業の対外直接投資のGDP比は、世界の直接投資のGDP比とほぼ同じペースで変動しつつ、上昇傾向を示しており、日本的経営が世界のグローバル化に遅れをとっているようには見えません。
更新:11月22日 00:05