2019年03月05日 公開
2019年03月05日 更新
写真:吉田和本
日本が直面している人口減少と高齢化の問題、そして様々な障害の社会への受容を、いかにしてテック(デジタル・テクノロジー)で解決していくか。2018年11月に開催された産業交流展2018において、メディアアーティストで筑波大学学長補佐・准教授の落合陽一氏が「明日の戦略」を語った。その内容を紹介する。
※本稿は2018年11月14日に開催された産業交流展2018における落合陽一氏の特別講演「日本のイノベーション戦略と中小企業」より一部抜粋・編集したものです
日本の製造業は長いこと良質なモノづくりに力を入れてきましたが、大量生産品が国際マーケットで成功する一方で、ブランドの価値によってお金を稼ぐということが苦手であるように感じています。
そもそも、ブランドとは何か。たとえば、ルイ・ヴィトンのロゴが付いている財布が3万円で、ロゴはないが品質は同等の財布が1万円だとすれば、この2万円の価格差はまさにブランドの力によるものです。
LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ)は、ルイ・ヴィトンという高級ブランドのイメージをつくるため、生産数を絞り、デザインや品質の管理による高品質なブランド価値を構築することでプレミア感や安心感を消費者に与えてきました。
また同社は、モエ・エ・シャンドンやドンペリなどの晴れ舞台用のシャンパンを生産していますが、ブランドのイメージを醸成するための施策を長年かけて行なってきた経緯があります。
大量生産品以上の価値作りをしてきたブランドの戦略は学ぶべきところがたくさんあるように感じています。はたして、いまの日本にそうしたブランドがどれだけあるでしょうか。
例外もあるにせよ日本のデジタル時計の価格は新品購入時がいちばん高くなりがちですが、スイスから輸入される機械式の中古時計は、新品より高いビンテージ価格で取引されるものも多くあります。
現在の日本に欠けているのは、時計であれ、自動車であれ、購入してから時が経つほど価格が上がるような設計とは何か、という発想です。
いかにして価値が減らない製品を構築するかは永遠の課題ですが、大量生産品の価値観の次はそこにしっかり目を向けて行かなくてはならないでしょう。
住宅についても、同じようなことがいえます。パリにあって東京に少ないものは、建てたあとに価格が上がる住宅です。人が住んだあとの住居でも価値が損なわれないフランスの住宅文化は、日本が見習うべき点です。
人口減少に見舞われている日本では、今後インフラの新設がますます難しくなっていくでしょう。京都には古い町屋を尊ぶ考えがありますが、そのような価値観を広げていかなければなりません。
更新:11月26日 00:05