2011年08月31日 公開
2023年09月15日 更新
文部科学省は8月24日、公立小中学校の校舎や体育館など約11万6千棟について、耐震性がない建物(耐震診断未実施分を含む)が今年4月1日時点で2万2,911棟、そのうち、4,614棟は、震度6強の地震で倒壊する恐れがある、とする調査結果を発表しました。同省は、東日本大震災では耐震化されていない校舎などが大きな被害を受けた経緯をふまえ、5年以内に全校の耐震化完了を目指すとしています。ただ、耐震診断未実施分を除いた約1万6,700棟の耐震化工事だけでも7,000億円強の国庫負担が必要と見込まれています。自治体は、優先順位を明確にして耐震化を進める必要があります。
調査は、東日本大震災の被害が大きかった岩手、宮城、福島3県を除く44都道府県が対象で、耐震化率は80.3%と前年から7%上昇しました。今年3月には、「地震防災対策特別措置法」が改正され、大規模地震による倒壊等の危険性が高い公立小中学校施設について、2015年度末まで耐震補強事業に対する国庫補助が原則2分の1から3分の2に拡充されています。今年度の当初予算、同第1次補正予算による事業の完了後は、公立小中学校施設の耐震化率は約86%になる見込みです。
このように、今後も耐震化が進むことが期待されますが、一方で保有する小中学校施設の耐震化率が50%未満の自治体は99、耐震診断さえ未実施の学校施設がある自治体は274、第2次診断(具体的な耐震補強内容の検討を行うための診断)が必要な建物棟数は6,777棟にも上ります。こうした自治体のなかには、国庫補助を除いた残りの費用さえ賄えない厳しい財政状況にある所も多く、計画どおりに耐震化を進めることはなかなか容易ではありません。
加えて、そもそも、どの学校施設を耐震化するかという見極めの問題があります。東日本大震災ではピーク時に600ヵ所以上の学校が避難所となりました。防災拠点としての役割を重視して全ての学校施設を耐震化することがはたして妥当なのか、根本的な疑問は拭い切れません。近年では、1年に全国で約500校もが廃校になっているからです。平成14~21年の間だけでも全国で3,671校が廃校となり、そのうち現在も建物利用の予定のない廃校舎は794校もあります(文科省調べ)。
補強・改修工事の優先順位が欠落すれば、近いうちに廃校が見込まれる学校をも耐震化してしまうことにもなりかねません。各自治体は庁舎、病院、公民館など学校以外の施設も数多く有しています。厳しい財政事情の中では、国庫補助の有無に関わらず、自治体にとっての施設の優先順位を見直し、的確に耐震化していくことが必要です。自治体には、どの施設を早急に耐震化すべきか、学校を含む公共施設全体の再編成を視野に入れた検討が求められます。
(2011年8月29日掲載。*無断転載禁止)
更新:11月22日 00:05