2010年11月24日 公開
2024年12月16日 更新
先日、韓国でG20首脳会合(11月11~12日)が、日本でAPEC首脳会合(11月13日~14日)が立て続けに開催されました。
G20もAPECも扱っているのは主として経済問題ですが、G20は世界経済や金融の問題を扱う枠組みであり、参加国も世界の五大陸から集まっています。それに対してAPECはアジア太平洋地域の国・地域がメンバーで、当該地域の経済連携や貿易投資の自由化・円滑化などを主として論じます。とはいえ、現在のグローバル化時代に、世界経済と地域経済をはっきりと区別するのは不可能ですから、議論のテーマが重複することもしばしばあります。また、会合の合間に、参加国の首脳があちらこちらで二国間会談を繰り広げるのも、大きな国際フォーラムに共通して見られる光景です。
2008年に始まったG20首脳会合(注:「G20財務相・中央銀行総裁会議」は1999年から開催)が韓国で開催されたのは今回が初めてでした。李明博政権は「韓国は先進国と途上国をつなぐ架け橋の役割を果たす」として、韓国の存在感と外交力を世界に示そうと、早くから「G20ソウル・サミット」成功のために力を入れてきました。もともとは今年4月の開催を希望していたところ、アメリカの核・セキュリティーサミットと重なってしまい、その後の開催日程調整では、APEC横浜より目立たせるため「何としてもAPECより早く開催する」ことを目指したと言われています。
ソウル・サミットでは通貨安競争の回避や経常収支の不均衡是正が重要なテーマとなり、経済の不均衡を評価するための指針を開発することが合意されました。韓国やアメリカは経常収支の黒字・赤字を抑えるための数値目標を設定するよう求めていましたが、数値目標設定に反対する国々は、アメリカの金融緩和政策や財政赤字にこそ問題があると反論、結局数値目標は設定されず、問題は今後に持ち越されることになりました。
他方、日本が15年ぶりに議長をつとめたAPECの首脳会合では、APECの将来図を「強い共同体」「緊密な共同体」「安全な共同体」という3つのイメージで示す横浜ビジョンが採択されました。「強い共同体」については、APECとして初めての成長戦略を策定し、貿易不均衡是正や新産業育成、持続可能な成長など、5つの柱が示されました。「緊密な共同体」では、2020年のアジア太平洋貿易圏(FTAAP)の実現に向け、(1)ASEANに日本、中国、韓国を加えたASEAN+3、(2)ASEAN+3にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えたASEAN+6、(3)環太平洋経済連携協定(TPP)、の三つを軸に、統合を進めていくことが盛り込まれました。そして「安全な共同体」では、食糧安全保障や感染症対策、防災などに関する協力を推進していくことが明記されました。
横浜APECでは、世界経済を牽引するアジア太平洋地域の成長戦略策定のため、日本がどれほどリーダーシップを発揮できるかが注目されましたが、まずはつつがなく議長国としての役割を果たしたといえます。また、日本にとっては、今回のAPECは来年議長国をつとめるアメリカと緊密な連携を図り、日米関係強化の機会とするという意味もありましたが、日米首脳会談で改めて日米関係の重要性が確認されたこともあり、日米関係の修復に一定の役割を果たしました。
ですが、菅政権が直面する課題は決して解決したわけではありません。一つは関税をほぼ例外なく撤廃する貿易自由化枠組みであるTPP(環太平洋連携協定)の参加を巡る問題であり、もう一つは最近摩擦が発生している中国やロシアの首脳とどのような外交を行うかという問題です。
日本はTPPをめぐる関係国との協議開始を決定しましたが、国内農業保護を主張する勢力は厳しく反発しており、国内の意見を調整することができるかが注目されます。
中国やロシアとの関係では、APEC首脳会合中に、とりあえず首脳会談は実施されたものの、互いにそれぞれの国内世論に気を使って慎重な言動に終始し、大幅な関係改善がなされたとは言い難い状況です。日中関係の悪化は周辺諸国からも心配されており、菅政権は日中関係に関わる複雑な利益と国際社会からの視線、国内世論の動向を見極めつつ、難しい舵取りを迫られます。日米関係でも、普天間移設をめぐる問題が解決する見通しが立っているわけではなく、APECを無事に終えたといって、胸をなでおろしている暇はなさそうです。
(2010年11月15日掲載。*無断転載禁止)
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更新:12月27日 00:05