2010年11月24日 公開
2023年09月15日 更新
2010年11月2日、全米50州のうち37州で知事選の投票が行われます。今まで、アメリカの知事選で提示される公約が日本で紹介されることはあまりありませんでしたが、日本の公約とはどのように異なっているのでしょうか。その違いについて見ていきたいと思います。
1.課題解決のための具体的な「プラン」を提示する
まず、アメリカの州知事選の場合、イギリスのような「マニフェスト」という言葉は全く使われていません。代わりに、「プラン(Plan)」という言葉がよく使われています。「マニフェスト」は数値目標や財源、期限を明示した公約とされています。それに対し「プラン」は文字通り計画を指し、争点となるような比較的大きな課題(Issues)を解決するための「プラン」をもっているかどうかが、選挙で問われることになります。
また、必ずしもすべての課題について、プランが用意されているわけではありませんが、特に現在の厳しい経済状況を踏まえ、雇用創出については、民主党、共和党の別を問わず、ほとんどの候補者がプランを提示しています。体系的にまとめているプランとして、以下の例が参考になるでしょう。
ただし、「プラン」という言葉を使っている割には、期限を明示しているものはそれほど多くありません。この点に限っては、日本にも優れているマニフェストは多いと言えます。他方、まだまだ日本のマニフェストには、分野ごとの政策の羅列にとどまっているものも多いので、目下懸案の雇用創出や財政再建など特定課題の解決に向けて、「プラン」を提示していく発想には学ぶべき点があるのではないかと思います。
2.公約の全体像を提示している例は少ない
また、1点目と重なりますが、課題別のプランの提示がほとんどで、それぞれの課題についての掘り下げは深いものの、公約の全体像が見えにくい印象を受けます。全体を説明して、個別に入っていくというケースもまれです。このため、有権者が全分野の公約を読んで理解するには骨が折れます。
もちろん、包括的なプランを提示している例もありますが、以下を含め7つ程度にとどまります。
また、この中で要約版を提示しているのは、John Stephen氏ぐらい(2ページ)で、Andrew Cuomo氏のプランはなんと252ページにも及びます。PRの先進国・アメリカであっても、日本と比べ必ずしも有権者に伝わりやすい公約集が多いわけではないようです。
以上のように、アメリカの公約のあり方が日本と異なっている点として、(1)分野ごとに政策を並べるというより、大きな課題に対して解決のための「プラン」を提示していること。(2)また、公約の全体像をわかりやすく伝えていくという発想はあまりなく、個別課題ごとにプランを示して説明する傾向が強いこと、などが指摘できます。選挙で重点的な課題についてはプラン比べをする。そのために掘り下げたプランを準備するといったやり方には、日本も学ぶべき点が多いように思われます。
(2010年11月01日掲載。*無断転載禁止) 政策シンクタンク PHP総研 Webサイト【http://research.php.co.jp/】(PCサイト) 政策シンクタンク PHP総研の最新情報はメルマガで⇒【http://research.php.co.jp/newsletter/】(PCサイト)
更新:11月21日 00:05