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五輪招致再挑戦 招致成功の条件

2011年07月27日 公開
2023年09月15日 更新

佐々木陽一(政策シンクタンクPHP総研コンサルタント)

 7月16日、東京都が2020年夏季五輪の招致を正式表明しました。16年大会に続く再挑戦です。都は20年五輪開催の意義を、東日本大震災から立ち直った日本を世界にアピールする「復興」に求めようとしています。しかし、今回は、福島第一原発事故に伴う放射線という新たな問題にも対処しなければならず、16年開催計画を一部、大幅に見直して招致に取り組んでいく必要があります。

 省みると、半径8キロ圏内に90%の競技会場を収めた「コンパクトさ」、太陽光パネルなど「最新技術の駆使」や「環境最優先」などを掲げた東京の16年開催計画は、1次選考でIOC(国際オリンピック委員会)から立候補7都市中、最高評価を得ました。にもかかわらず、最終選考で敗れた背景には、招致に不可欠な住民の支持率が約55%と最低だったことも挙げられます。今回も、「大震災で日々の暮らしもままならないのに、五輪どころではない」という声が多くあることは事実です。統計に基づく世論調査ではないものの、Yahoo!の意識調査『みんなの意見』(6月13~23日実施)では、回答者(33,807人)の63%が20年五輪の招致に反対しています。

 前回の招致失敗と同じ轍をふまないためには、復興の意味合いを明快に打ち出し、都民、国民の支持を得ることが招致成功の条件と言えるでしょう。具体的には、都は震災後早々に、五輪開催年を目標年とする都政の新たな長期計画『2020年の東京』や、被災者・被災地支援など総額1,374億円規模の事業を盛り込んだ『東京緊急対策2011』を策定しました。これらを着実かつ迅速に実行することは、「なぜ、今、東京なのか」という国内外の懸念に答えることにもなるでしょう。

 加えて、都には原発事故に伴う放射線対策も求められます。この問題に敏感な外国人が東京での五輪開催を忌避する可能性は否定できないからです。例えば、都内から排出された下水汚泥の焼却灰は、現在、東京湾の中央防波堤外側埋立地で埋設されています。16年大会ではこの埋設地一帯で、自転車(処分場)、馬術(中央防波堤内側埋立地)、ボート、カヌー(防波堤沿い水路)各競技の開催を計画していました。ところが、東京都環境局の『都廃棄物埋立処分場での放射線量測定結果』(今年5~6月に調査)によると、埋設地では、毎時0.19~0.80μSv(マイクロシーベルト)と、都内他地点と比べて数倍の放射線量を検出した地点があります。その数値は、直ちに健康に実害を及ぼさない水準とはいえ、これらが招致活動に悪影響を及ぼすことも懸念されます。

 招致活動は、今後1年半が勝負です。IOCへの開催計画概要の提出期限が来年1月、さらに、同年4月頃からIOC関係者が立候補地の視察を開始する予定だからです。残り少ない時間のなかで、都は並行して難しい課題解決に取り組んでいかなければなりません。

(2011年7月25日掲載。*無断転載禁止)
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