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「病気が末期の状態になったら、延命しない」 小山明子さんが語る死との向き合い方

2015年11月27日 公開
2022年09月15日 更新

『Voice』編集部

ただ生かすだけの延命に疑問 

 超高齢社会の先進国において、延命治療の研究は目ざましい発展を遂げている。もちろん日本も例外ではない。しかし、「医療の力を借りて寿命を延ばすことだけが最善の選択とは限らない」と、科学の力で延命する医療に疑問視する声も多い。

 人生の終わり方について、女優の小山明子さんは「自分の病気が末期の状態になったら、絶対延命はしない」と意志を固めている。義理の姉が病気になった際、延命治療を施される姿を間近で見ていた小山さんは、「意識もないのにただ生かすための延命は、違うのではないか」と不審を抱いた。その後、リビングウィル(日本尊厳死協会)に入会し、延命治療を選択しない意思を家族に話す機会をもった。

 さらなる人生の転換期となったのが、2013年1月に亡くなった夫・大島渚監督との別れだった。「人生に終わりがあることがわかり、自分の生き方を考えるようになった」という小山さんは、孫と2人旅に出たり、習い事に通ったりして毎日を楽しみながら、精一杯生きる。

 

死生観を見つめなおすヒントを提示する映画

 どうすれば小山さんのように、いずれ確実にやってくる死と向き合い、残りの人生を謳歌する選択ができるのだろうか。11月28日(月)に日本公開されるイスラエル映画『ハッピーエンドの選び方』は、“人生の最期の迎え方”についてユーモアを交えて描きながらも、自分の死生観を見つめなおすヒントを提示してくれる作品である。

 エルサレムの老人ホームに暮らすヨヘスケルは、ある時、自らスイッチを押すだけで苦しまずに最期を迎えることができる「安楽死装置」を開発する。だが装置の評判が広まり、安楽死を望む人々が殺到。そんななか、愛する妻レバーナが認知症を発症し、ヨヘスケル自身も「妻との最期の時をどう迎えたいか」という問題に直面する。本作は、第71回ベネチア国際映画祭で観客賞を受賞するなど各国の映画祭で高い評価を獲得し、日本公開前から話題を呼んでいる。

 映画を観た小山さんは、「現実にありうる話、誰もが明日はわが身かと思うはず」とヨヘスケル夫婦の苦悩と愛に涙した。また、シャロン・マイモンとタル・グラニット監督が大島渚監督の大ファンであることを聞き、感激のあまり大島渚氏の1周忌で記念に作ったペンシルをプレゼントしたという。両氏は、映画『おくりびと』(2008年)に影響され、本作を作った。きっと多くの日本人にも受け入れられるに違いない。

 世界一の高齢国・日本に身を置く私たちは、死を話題にすることをいたずらに避けるのではなく、むしろ徹底的に死と向き合い、自分の人生を納得して終わらせるにはどうすればいいかを考えるべきではないだろうか。

※『Voice』2月号(2016年1月10日発売)にて小山明子さんの特別インタビューが掲載されます。本記事と併せてお楽しみください。

<映画紹介>

『ハッピーエンドの選び方』(原題:THE FAREWELL PARTY)

発明好きのヨヘスケルと妻であり認知症を患ったレバ―ナの選択とは―?エルサレムの老人ホームを舞台に繰り広げられる、夫婦の苦悩や友情をユーモアたっぷりに描き出すイスラエル発のヒューマンドラマ。

11月28日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

監督・脚本:シャロン・マイモン&タル・グラニット

出演:ゼーブ・リバシュ、レバーナ・フィンケルシュタイン、アリサ・ローゼン

2014年イスラエル/ヘブライ語/日本語字幕:稲田嵯裕里/字幕監修:笈川博一

後援:イスラエル大使館 配給:アスミック・エース

©2014 PIE FILMS/2-TEAM PRODUCTIONS/PALLAS FILM/TWENTY TWENTY VISION

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