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「地域政党」の課題とは?

2011年04月13日 公開
2023年09月15日 更新

茂原純(政策シンクタンクPHP総研コンサルタント)

 橋下徹・大阪府知事の「大阪維新の会」、河村たかし・名古屋市長の「減税日本」をはじめ、「京都党」、「地域政党いわて」、「埼玉改援隊」、「対話でつなごう滋賀の会」など、全国各地で「地域政党」が設立されています。

 地域政党とは、地域に密着して地域の課題解決に取り組む政党です。既存政党のように様々なしがらみにとらわれることなく、財政再建や議会改革などに思い切った政策展開を期待したい反面、課題が多いことも事実です。ここでは、その中から、いくつかの課題について見てみましょう。

 第1に、「大阪維新の会」や「減税日本」など首長が主導する地域政党には、以下の点を指摘することができます。ひとつは、仮に党の所属議員が議会で多数派を構成した場合には、首長が掲げる政策を議会で難なく通すことができる反面、本来、議会が果たすべきチェック機能がないがしろにされてしまう危険性もあるということです。もうひとつは、橋下知事や河村市長といったスーパースターがいなくなったときに、党の求心力が低下してしまうことが予想され、政党としての継続性が危惧されるということです。

 さらに、「大阪維新の会」が主唱する「大阪都構想」の実現には国の法律の改正か新たな立法が必要であり、地域政党として、いかに国政レベルを動かしていくかという大きな課題があります。一方、「減税日本」は、名古屋市のみならず様々な自治体で候補者を擁立していますので、各自治体の徹底した現状分析の下、「減税」への道筋を示す具体的なプランを提示していくことが求められます。

 第2に、多くの地域政党に共通する課題として組織的な脆弱性を指摘することができます。地域政党が注目されているといっても、その関心の大半は「大阪維新の会」と「減税日本」に限られ、これら以外に大きな勢力になっている地域政党は見当たらないのが現状です。もちろん、「京都党」や「地域政党いわて」のように、結党理念や党綱領を示し、市民とともに地域密着でマニフェストを作成するなど、議員主導型の活発な地域政党もありますが、それでも、実際に政策を実現していく上では議員の数がまだまだ足りません。

 ましてや、一人の議員が地域政党を名乗ったり、民主党の支持率低下を受けて地域政党ブームに乗ろうと数人の地方議員が鞍替えした場合などは、言うに及びません。地方議会では、「無所属の会」という会派もよく見られますが、既存の政党に属さないというだけで、共有する具体的な政策もなく、勢力を拡大しようという意欲も感じられないケースがまま見受けられます。地域政党がこれと同じであってはなりません。

 また、「地域政党」をつくるという名目だけで結党した場合にも、継続性が危ぶまれます。なぜならば、「地域」だけでは理念とは言えないからです。現在の中央政党と同じように、いろいろな考えの議員がいて意見がまとまらなかったり、非生産的な派閥政治を繰り広げて機能不全に陥ったりしないようにするためには、明確な理念や基本政策を掲げ、それに賛同する議員で政党を構成することが肝心です。

 第3に、資金面での脆弱性も指摘しなければなりません。現行の政党助成法では、所属する国会議員の数など、政党の要件を既定しており、「大阪維新の会」や「減税日本」でも、現時点ではこの要件を満たしていないため、政党助成金は交付されていません。地域政党にどれだけ資金が必要かについては、議論の余地のあるところですが、少なくとも中央政党との資金面での差は歴然としています。

 以上、地域政党の課題について見てきましたが、地域政党がこれから躍進できるかどうかは、何にも増して、地域に密着して、地域課題を掘り起こし、政策を提示し、政治勢力を形成しながら政策実現していく政策力と実行力にかかっています。地域政党には、ともすると中央政党の下請けになりがちな地域の既成政党に刺激を与え、地域の善政競争を促していくことを期待したいと思います。

(2011年4月11日掲載。*無断転載禁止)
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