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出先機関の地方移管は、3ゲン同時に行うべし!

2011年03月02日 公開
2023年09月15日 更新

松野由希(政策シンクタンクPHP総研特任研究員)

 民主党は、マニフェストに国の出先機関の原則廃止を掲げています。昨年末にまとめた「出先機関改革アクションプラン」実施のため、地域主権戦略会議の下に設けられた推進委員会の初会合が2月17日に開かれました。出先機関の受け皿としては、関西広域連合や九州広域行政機構が名乗りをあげています。九州は、既存の広域連合とは異なる広域行政機構という組織を新たに設立し、国の8府省15系統の出先機関の事務について、「丸ごと」受け入れる意向を示しています。さらに沖縄県の仲井眞知事も、国の沖縄総合事務局の事務・権限を県に移管することについて「仕事を丸ごと受け入れることは県の能力という点では問題ない」と表明しています。そこで「丸ごと」受け入れとはいかなることなのかを見ていきましょう。

 「丸ごと」受け入れとは、国の実施している事務について、3ゲン(権限・財源・人間)をセットで地方移管するということです。例えば道路整備についていえば、3ゲンは国道の整備・維持管理に関する権限・財源・人員に相当します。これはまさしく、道路整備特別会計(社会資本整備事業特別会計の道路整備勘定)と地方整備局をそのまま地方移管することを意味します。

 出先機関の具体的な移管を議論していた地方分権推進委員会では、2008年の第二次勧告において、国土交通省地方整備局など6機関の人員移管について、2.3万人という数値目標を示しました。しかし、人件費については、国庫補助負担金、地方交付税、国税から地方税への税源移譲を含めた税源配分の見直しを一体的に検討するといった表現に留まり、その先の議論には至りませんでした。人員と財源を別々に議論するため、議論がその先に進まなかったのです。

 人員を移管しても、国の財源で人件費を負担すれば、移管した職員は国を見て仕事をすることになってしまいます。地方移管職員が、その地域の状況を把握しつつ、地方の独自性を活かせるような、地域主権に相応しい仕事ができる枠組みを作らなくてはなりません。そのための財源は地方財源である必要があります。つまり、現在、国税として徴収されている税源を地方移譲しなくてはならないのです。

 改めて道路整備特別会計を見てみましょう。道路特会には約8千人の職員がいます。道路整備費や直轄事業負担金などの財源をもとに、道路整備の直轄事業や補助事業、高速道路会社への貸付などを行っています。これらの人員と財源と権限をまとめて地方移管するのです。移管後は、地方に入る財源をもとに、地方が主体となって道路整備や維持管理を行います。地域の実情に詳しい職員が、地域からあがってくる税収をもとに、その地域に最も相応しい道路整備を行っていくのです。

 この場合、移管の受け皿は現行の47都道府県のような単位としてよいでしょうか。例えば国道16 号は、4都県と5政令市をまたがります。現在は首都圏サミット(9都県市首脳会議)で、この広域的な枠組みをもとにした管理が議論されています。道路ネットワークのような広域的なインフラに見合う単位として、全国10程度の道州規模の地域区分が必要となるのです。このような受け皿をつくり、特別会計を道州単位に移管していくことこそが、国の事務の「丸ごと」受け入れに相応しい手法といえるのです。

(2011年2月28日掲載。*無断転載禁止)

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