2013年03月11日 公開
2023年09月15日 更新
昨年7月、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が施行され、4月から2年度目を迎える。太陽光発電はメガソーラーを中心に大きく増加したが、一方で、地域が主導する中小規模の再生可能エネルギー事業の広がりは限定的だ。今後、再エネ事業をめぐり、国・自治体はどのように取り組むべきか考えてみたい。
PHP地域経営塾では、昨年11月に政策提言「地域主導型再エネ事業を確立するために」をまとめた。そこでは、自治体は再エネ推進の基本条例を作ること、事業推進レベルに応じた支援プログラムを準備すること等を提言した。提言では、まず自治体は方針を固め、再エネ基本条例を制定すべきとしたが、一足飛びに、より踏み込んだ事業に取り組む自治体も現れはじめている。
特徴的な事例を2つ紹介したい。1つには、栃木市の事例である。栃木市は、この1月に、公共施設の屋根を民間事業者に貸し、発電事業を行わせる「屋根貸し」事業の事業者を決定した。この事業では、屋根貸出しにより得た使用料については、「再生可能エネ普及促進基金(仮称)」に積み立て、一部を公共施設の改修費用に活用するとしている。収益を環境事業の原資とするような事例は既に存在するが、施設の維持補修を使途とすることを盛り込んだ事業は、栃木市が全国でも初めての取り組みだろう。公共施設の維持補修・建て替えのための財源が不足することを見越し、財源を確保しようとする先駆的取り組みとして評価できる。
もう一つは、長野県富士見町の事例だ。全国的に、遊休地に大規模太陽光発電所を誘致する事例は多いが、富士見町は、町が自ら出資する第三セクター「富士見メガソーラー株式会社」を設立し、土地開発公社の売れ残り住宅用地にメガソーラーを建設し、その事業収益を土地開発公社の11.7億円の借金返済に充てようとするものだ。富士見町議会は昨年10月に、この件に関する予算を議決した。発電開始は今年11月を予定しているが、20年間で9.3億円の収入となる見込みで、町民負担の大幅な縮減となる可能性がある。全国に存在する土地開発公社問題を解決するための取り組みとして、今後の推移が注目される。
国も、様々な法制度・規制改革のほかに、地域の事業を後押しするための具体的な補助事業を行っている。例えば、経済産業省の「再生可能エネルギー発電事業を通じた地域活性化モデル開発支援調査事業」だ。昨年12月までに、全国で31事業が選定されている。また、環境省でも、「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」として地域の事業を補助している。これらは、芽吹き始めた地域の事業を後押しするもので、調査事業として報告書にまとめられ、全国の民間事業者に対して情報提供し、再エネ事業への参入を促す役割も果たす。
ただし、これらのモデル事業は、太陽光を利用した取り組みが多い。これは、太陽光発電に比べ、その他のエネルギー源を利用した場合には事業を成立させる事が難しいためだ。しかし、地域資源を活かすという視点からは、バイオマス、風力、水力などが、事業として成立する事が望ましい。それら多様な地域資源を活用した事業が、今後順調に展開していけるかどうかは、国・自治体による政策や支援事業によるところが大きい。
PHP地域経営塾では、平成25年度予算案で、再エネをめぐる予算と事業のポイントが明らかになってきたことを受け、今後の再エネ政策と自治体の戦略について議論する講座「これからの再生可能エネルギー政策と平成25年度予算」を3月25日に開催する。ご関心のある自治体職員・議員のご参加を賜れれば幸いである。
★研究員プロフィール:金坂成通 <外部サイト>
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更新:11月22日 00:05