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設置認可より大学評価システムの見直しを

2012年12月04日 公開
2023年09月15日 更新

亀田徹(政策シンクタンクPHP総研教育マネジメント研究センター長)

 田中文科大臣が大学設置認可の仕組みを問題視したことを受け、設置認可制度の課題を検討するための会議が先月下旬から文科省でスタートした。報道によると、厳格な規制が必要との意見が委員から出された一方、大学進学率をいま以上に高めるべきとの指摘もあったという。日本の大学進学率は51%であり、OECD諸国の平均62%と比べて「高いとは言えない」というのが文科省の見解だ。

 設置認可制度については、近年、規制緩和が進んでいる。平成14年度には、「事前規制から事後チェックへ」との方針に基づき文科省は設置審査の基準を明確化・簡素化し、一定条件の下で認可ではなく届出で足りるとの制度改正を行った。

 事前規制の緩和と同時に、事後チェックすなわち大学に対する第三者評価も導入された。大学の質の維持向上をはかるためである。

 具体的には、学校教育法の改正により、大学全体に対する機関別評価および専門職大学院に対する専門分野別評価が義務づけられることとなった。たとえば機関別評価の場合、教育研究組織、教育内容、財務や管理運営などに関し、大学は自己評価を行うとともに7年ごとに外部の評価団体(「大学評価・学位授与機構」など)による評価を受ける。評価基準は各評価団体がそれぞれ設定しており、教育内容であれば「教育課程が体系的に編成されているか」といった評価基準が定められている。

 大学の質を継続的に維持向上させるには、設置認可の厳格化よりむしろ評価システムの活用を重視すべきである。設置認可によって大学の質が維持されるのは設置認可の時点に限られるが、評価は定期的に実施されるからだ。

 とはいうものの、効果的な評価が実施されているとはいい難いのが実態だ。

 本年6月に文科省がまとめた「大学改革実行プラン」では、これまでの第三者評価は「法令適合性など最低基準の確認が中心」になっていたと分析する。「最低基準の確認」もたしかに重要ではあるが、ほとんどの大学は最低基準は当然クリアしている。「最低基準の確認」をいくら実施したとしても現状の追認にとどまり、大学の質向上は望めない。

 では、評価システムをどのように見直すべきか。
 効果的な評価を実施するには、PDCAサイクルの趣旨を理解しておくべきだろう。PDCAサイクルの目的は「プロセスの改善」だ。結果にいたるプロセスを改善し、改善後のプロセス実施の結果をチェックし、さらにプロセスに改善を加えるというのがPDCAサイクルである。つまり、評価を行う前にまずプロセスの改善を行う必要がある。現行の評価システムでは、まず評価を行って評価結果をどう改善につなげるかを考えており、評価と改善の順序が逆になっている。

 たとえば、前述の「教育課程が体系的に編成されているか」という評価基準は、現状を評価するための基準だ。そうではなく、「体系的な教育課程の編成のために、大学としてどのような改善を実施し、改善実施の結果はどうであったか」とプロセスの改善とその結果を問わなければならない。

 大学がみずからPDCAサイクルを推進し、評価団体は、そのPDCAサイクルが機能しているかどうかを第三者の立場から評価する。現状の追認ではなく、主体的な改善を前提とした評価システムに改めるべきだ。

 文科省は評価システムの抜本改革を行うという。大学の質の向上を促す評価システムの設計を求めたい。

<研究員プロフィール:亀田徹>☆外部リンク

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