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菅第二次改造内閣が直視すべき3つの数字

2011年02月02日 公開
2023年09月15日 更新

松野由希(政策シンクタンクPHP総研特任研究員)

 1月14日、菅第二次改造内閣がスタートしました。目玉人事として、財政再建派である与謝野馨氏がたちあがれ日本を離党し、経済財政担当大臣となりました。与謝野氏を中心に、6月までに消費税増税も視野に入れて、社会保障の改革像を示すことになります。社会保障制度の改革が前進するのならば国民としては喜ばしいことです。しかし、消費税増税といった負担を伴う政策を行うからには、これまで民主党が国民に約束した政策を実行に移せているのかを検証する必要があります。そこで、3つの数字を確認してみましょう。

 2011年度予算案は、総額92兆円の最大規模となり、しかも公債金収入(新規国債発行額)が 44兆円と、税収(41兆円)を上回ることとなりました。確認しておきたい数字の1つ目は、プライマリーバランス(基礎的財政収支、以下PB)です。PB が均衡していれば、政策的な経費にかかわる歳入と歳出が均衡するので、新たな歳出増によって国債残高を増やさないという意味で、財政健全化のひとつの指標になります(詳細は「プライマリーバランスで読む2010年度予算案」(2010.01.06掲載)参照)。 11年度当初予算ベースで、PBは23兆円の赤字となっており、昨年度(23兆円)と同額で、財政収支は悪化したままです。民主党が政権運営に着手したのは09年9月。それから2度の予算編成作業を行ってきました。10年6月には財政運営戦略が閣議決定され、中期財政フレームに基づいて、11年度の予算編成においては国債発行額が10年度の44兆円という水準を上回らないことを目標に予算編成が行われました。

 2010年夏の参院選マニフェストで、民主党はPBについて「2020年度までに基礎的財政収支の黒字化を達成」することを約束しています。PBは11年度も10年度と同じ23兆円の赤字であったのに、はたして10年間でPB均衡が達成できるのか不明です。

 それでは、歳出削減目標がどの程度になっていたかというと、09年の衆院選マニフェストでは、ムダづかいの削減で、4年間で9.1兆円を生み出すことが明記されています。

 そこで、2つ目の数字として、ムダ削減の主戦場であった事業仕分けの成果を確認してみましょう。 3回に及ぶ仕分けでの歳出削減は1兆円に満たず、十分な成果をあげているとはいえません。行政刷新会議の仕分けで「廃止」と判定されても、厚生労働省の職業情報総合データベースの運営費、総務省の明るい選挙推進費、経済産業省の情報処理推進機構の人材育成事業のように、仕分けの結果に従わず概算要求されたものもあります。行政刷新会議の判定結果には法的拘束力がないので、省庁は抵抗し多くの廃止決定は先送りされてしまうのです。これでは仕分けはパフォーマンスにすぎず、刷新会議自体がムダということになってしまいます。構造的な問題に踏み込めない刷新会議の問題もありますが、結果に法的拘束力を持たせることが必要ではないでしょうか。

 3つ目に確認したい数字として、社会保障関係費が毎年1兆円ずつ増えていくことがあげられます。現在の給付と負担の構造を変えない限り、これは自然増という形で増え続けていきます。そこで、今後の社会保障制度改革では、保険料負担を上げ給付水準を下げる、といった見直しが必要になります。消費税増税も視野に入るでしょう。国民に痛みの伴う社会保障改革に踏み込むならその前に、菅内閣は国民の信頼を取り戻すことが先決です。

(2011年1月31日掲載。*無断転載禁止)
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