米国のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経科学学部で脳科学を学び、DAncingEinstein(ダンシング・アインシュタイン)を設立した青砥瑞人氏。
脳×教育×ITを掛け合わせて世界初のNeuroEdTechという分野を立ち上げ、教育機関のみならず、国や企業とともに人材育成に力を注いでいる。そんな青砥氏に、脳神経科学の観点から考えるこれからの時代の教育について聞いた。(聞き手:岩谷菜都美/編集部)
※本稿は『Voice』2022年3月号より抜粋・編集したものです。
――脳科学を学ぶにあたってなぜ米国のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経科学学部を選ばれたのでしょうか。
【青砥】知人から「医学や脳について学びたいのであれば米国に行けばいい。実力があれば経歴は関係ない」とアドバイスをもらったためです。すぐに米国に飛び、UCLAのニューロサイエンスの講義に潜り込むと、あらゆる人種の人たちがのめり込むように話を聴いていた。
世界中から脳について学びに来ている人たちの熱に圧倒され、入学を志します。数年間の猛勉強を経て、無事UCLAの合格通知を受け取ることができました。
――その後、経営者の道を進みますね。
【青砥】学問の追求よりも、神経科学と教育のあいだに架け橋をつくりたいと考えたためです。UCLA在学当時から、東大や京大といった、日本の優秀な学生の相談に乗るなかで、輝かしいレールの上を歩いてきたはずの彼らが「本当にやりたいこともわからないまま就職していいのか」という葛藤を抱いていると気付きます。
脳科学の本質はまさしく、世界に対するパースペクティブ(見方)を変え、新しい自己や世界を発見すること。日本の学生が抱えている課題に対して、神経科学からのアプローチが可能なのでは、と思い至りました。
まさに当時の米国では、ハーバード大学を筆頭に、「エデュケーショナルニューロサイエンス」という、教育と神経科学を掛け合わせた学問が立ち上がり始めていました。そこで、米国での知見を広げるとともに、帰国後は教育の現場を知るためにいくつもの小学校に掛け合い、無償で教師のサポートを開始します。
具体的には先生方と、神経科学の観点から教室をよくするためのアプローチを試行錯誤していきました。たとえば「褒め言葉のシャワー」のように、クラスのなかで生徒一人に対して、全員で良いところを褒めていく。個々の自己肯定が高まるなかで、次第に子どもたちが変わり、先生もいきいきとしだした。最終的には、学級崩壊していたクラスが再機能するようになったのです。
更新:11月21日 00:05