2021年07月20日 公開
写真:吉田和本
note株式会社が運営する「note」は、クリエイターが文章や画像、音声、動画を投稿し、ユーザーすなわち読者がそのコンテンツを楽しみ、さらには応援できるメディアプラットフォームだ。2021年3月末時点の会員数は約380万人、累計投稿数は1500万件に達しており、右肩上がりで数字を伸ばし続けている。
デジタルメディア興隆の時代に、noteはどういう社会をめざすのか。急成長の背景にはどのような戦略があるのか――。前職では書籍編集者として数々のヒットコンテンツを生み出し、現在はnote株式会社のCEOを務める加藤貞顕氏に話を聞いた。【聞き手:Voice編集部(中西史也)】
※本稿は『Voice』2021年8月号より一部抜粋・編集したものです。
――noteは「クリエイターが集う創作の街」というコンセプトを掲げています。この言葉には、どのような想いと理念を込めているのでしょうか。
【加藤】いろいろな人びとが集まる場所を比喩的に表現しました。現実世界でいえば、ニューヨークがイメージに最も近いです。
住宅街もあれば、セントラルパークのような大きな公園やメトロポリタンに代表される美術館、さらにはかつては治安が良くない地区だったけれどいまはお洒落に生まれ変わったブルックリンなど、ニューヨークにはさまざまな顔があります。そして何よりも、あらゆる人種の人びとがいて、自由と多様性にあふれている。
noteがめざすのもやはり自由な空間です。プロの作家からアマチュアまで誰もが表現できる場をつくっていきたい。またネット空間の利点として、場所や紙幅といったリソースの制約がない点が挙げられます。つまりは、デジタルの力によって、現実世界にはない「理想の街」がつくれるんです。
――加藤CEOはもともと、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)などのベストセラーを手掛けた書籍編集者でした。いつからデジタル分野に関心をもっていたのでしょうか。
【加藤】僕は幼少期を地方で過ごしましたが、活発に身体を動かすタイプというよりは、コンピュータをいじるのが好きな少年でした。
孫正義さん(ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長)がよく「情報革命で人間の知能は拡張される」と表現されているように、コンピュータは我々人類の可能性を広げてくれます。スコップが人間の手を、車が同じく足を伸ばしたと考えれば、コンピュータは思考を拡張させてくれるはず。子どもながらにそう感じていたんです。
それに、子どもって何かと不自由ですよね。お金はないし、自力で出かけられる場所も限られている。そうしたあらゆる制約を、コンピュータやインターネットは取っ払ってくれるんです。その意味では、無限の可能性があるといえます。
そんな少年時代でしたが、コンピュータと同じくらい好きだったのが本です。学生のころは毎日、書店や図書館に入り浸っていましたね。
いま振り返るとじつに有り難い話ですが、近所の書店ではツケで本を買えるように、親が計らってくれていたほど(笑)。僕にとって、デジタルと本という二つの原体験が、現在のnoteの活動に繋がっているんです。
更新:11月22日 00:05