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「マイナンバーカードを全国民へ」行政サービスのデジタル化に必要な官民連携

2020年12月14日 公開
2023年01月18日 更新

安宅和人(慶應義塾大学環境情報学部教授・ヤフー株式会社CSO)

安宅和人

職場でのFAXの利用はやめるべき

――厚生労働省は2020年5月末、新型コロナウイルス感染者情報の一元管理のためのシステム「HER―SYS(ハーシス)」を導入しました。しかし、自治体が稼働させているシステムとの互換性の欠如が指摘され、依然として感染者の発生届がFAXでやり取りされるケースも散見されました。全国共通のデジタルの仕組みを整備するには課題も多いように思います。

【安宅】誤解されがちですが、根本的な問題はシステムの互換性ではありません。今回でいえば、厚労省側のシステムに合致させるかたちで、各自治体がデータを入力する体制をとったのが間違いでした。

むしろ発想を逆にするべきで、各自治体から生まれるデータを、厚労省がコンピュータで自動的に吸い上げるアプローチをとるべきでした。人力ではなく機械が情報をとれば、余計な手間やコストはかかりません。

各自治体がAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース:サービス間で連携する仕組み)を整備し、情報の“蛇口”を設けておくことが肝です。

感染状況をリアルタイムで管理・照会できないFAXを利用するなどは言語道断。役所に限らず民間企業にもいえますが、もしいまだに基礎データのやり取りにFAXやPDFを利用している職場があれば、即刻見直すべきです。

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