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「慎重な者だけが生き残れる」 ゾンビ映画がコロナ禍に示唆するメッセージ

2020年07月15日 公開
2020年07月15日 更新

谷口功一(東京都立大学法学部教授)

谷口功一

国際政治学者のダニエル・ドレズナー著『ゾンビ襲来――国際政治理論で、その日に備える』(白水社)が話題を呼んでいる。同書で書かれるゾンビへの向き合い方が、現在のコロナ禍とあまりに重なるゆえだろう。我々は未曾有の危機にどう立ち向かうのか。『ゾンビ襲来』の邦訳を務めた東京都立大学法学部教授の谷口功一氏が、パンデミックを生き抜くためのヒントを述べる。

※本稿は月刊誌『Voice』2020年8月号、谷口功一氏の「『思考の距離戦略』としてのゾンビ考」より一部抜粋・編集したものです。  

 

死亡フラグの立ち方

私もドレズナーの希望へ向けた宣言にならい、長年ゾンビ映画を観てきた者として、ゾンビ・パンデミックのなかで生き残る秘訣を記しておこう。

差別的言動(人種やセクシュアリティ)を行なう者、胡乱な情報を盲信して軽挙妄動する者、むやみやたらに外に出たがる者、これらはおおむね速やかにスクリーンから退場することになる。

ラストシーンまで生き残る者が根っからの悪人であることはほぼなく、他者への思いやりをもった慎重な者だけがエンドロールに接することができるのである。

この間、われわれは少なからぬ犠牲を払って日々を過ごしてきたが、そのようななかで5月29日にブルーインパルスが東京上空を編隊飛行し、医療関係者に感謝の意を表したイベントには少なからぬ感銘を受けた。

コロナ禍の下、鬱々とした日々で下を向いて過ごすなか、人びとが同じ時刻、同じ瞬間に同じ空を仰ぎ見るのは、爽快な瞬間でさえあった。

ただ、犠牲を払ってきたのは、この感謝の対象となった人びとだけでなく、飲食店をはじめとする事業に従事する人びとも蔭ながら休業を自主的に選択し、消極的にではあっても感染拡大防止のために身を削っていたことは心に留められてもよいだろう、ゾンビにやられたくないのなら。

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