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安倍政権のコロナ対応は『シン・ゴジラ』と酷似? いまこそアジャイルな仕組みが必要な理由

2020年07月13日 公開
2021年03月09日 更新

安宅和人(慶應義塾大学環境情報学部教授/ヤフー株式会社CSO)

 

「密」とは真逆の「開疎」がトレンドに

都市化と開疎化

――新型コロナは、あらゆる業種の企業に大打撃を与えています。この難局を乗り切るために、経営者がもつべき思考は何でしょうか。

(安宅)いま世界で何が起きているのか、マクロなトレンドを押さえることが重要でしょう。どんな天才経営者でも、これを無視しては世界との競争には勝てない。ではそのトレンドが何かといえば、「with コロナ」状況を前提とした密の回避です。

人類はこれまで、進んで三密の空間をつくり上げてきました。その象徴が都市化であり、人が便利で豊かに生きるために都会の文明を構築してきたわけです。

ところが今回のコロナ危機によって「密閉・密接(closed/contact)×密(dense)」から「開放(open)×疎(sparse)」な価値観へと向かう強いベクトルが働き始めている。私はこのことを「開疎化」と呼んでいます。

ただし、だからといって都市化の流れが完全に止まるわけではありません。どちらかといえば、従来の都市化に開疎化のトレンドが上乗せされるかたちで、世界が動いていくイメージです(図)。

まず進むのは都市空間とインフラそのものの開疎化でしょう。医療機関、商業施設、オフィス、大量輸送機関などの開放性を上げ、疎空間にする。それに伴い生活空間とオフィス空間の融合も進む。

映画『ブレードランナー』で描かれたような都市集中型の未来を避け、『風の谷のナウシカ』で描かれたような豊かな自然とともに暮らす空間に移る人も増えるでしょう。

――コロナ危機の前から「開疎化」を想定していた経営者は多くないはずです。必然的に多くの企業がビジネスモデルの大きな転換を迫られるでしょう。

(安宅)本社集中、都市密集型を前提にした経営戦略を見直す良いタイミングだと考えられます。日本はとくにそうですが、建物がひしめき合うオフィスビルは「密」の典型です。

ほかにも満員電車やカラオケ、地下のバーなどをいまの形態のまま残すのは難しい。飲食店にかぎらず肩を寄せ合うような業態が、コロナ前と同じスタイルで営業し続けられるかは甚だ疑問であり、相当なイノベーションが求められるでしょう。

今後は室内の空気が何分で入れ替わっているのかを誰もが気にする世界となり、どの業態であれ、空間の空気回転率を意識せざるをえなくなるでしょう。

「開疎化」の社会では、「清浄」という価値の比重が増していきます。そうしたトレンドに沿って新たなビジネスを生み出せるか、それがいままさに経営者に問われている姿勢なのではないかと思います。

 

現金が不衛生だったから進んだキャッシュレス化

――ICT(情報通信技術)を活用して時間や場所の制約を受けずに働く「テレワーク」も推進されています。個人の働き方も大きく変わるでしょう。

(安宅)当然のことながら、どこでも仕事ができるようになれば、都会に住居を構える必要はありません。

郊外にある開疎空間を拠点にしてもいいわけです。すると、現在は決して利便性が良いとはいえない土地であっても、自然豊かで開疎な度合いと生活・文化を支えるインフラ次第では価値が上がっていくことも考えられます。

また、接触から非接触への転換も重要なポイントです。近年、中国で急速にキャッシュレス化が広まりましたが、それは偽札問題以上に、現金が汚かったことが大きい。

中国では、銀行員など日常的に現金に触れる人は肺炎にかかるリスクが数倍に高まることが知られています。「with コロナ」時代に入り、これは中国固有の問題ではなくなりました。

一方、日本はキャッシュレス化で出遅れたのは事実です。しかし、コロナ禍を機に現金への接触を忌避する空気が醸成されれば、「穢れの文化」から一気に変わる可能性がある。

物流の世界ならば、人間の代わりにロボットが作業・配達することにより、接触をなくすこともできる。日本が直面しながらも手付かずだったキャッシュレス化と対人無人化という課題が、「非接触」視点で一気に進展するチャンスです。それもまた、「開疎化」がもたらす社会の変化の一つでしょう。

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