2019年06月21日 公開
2019年06月24日 更新
写真:吉田和本
野党が夏の選挙戦を有利に進めるためには、具体的な政策を打ち出して一体感を得ることが重要である。だが、いくつかの課題が障壁となっているという。それは何か。慶應義塾大学総合政策学部教授で元内閣官房副長官の松井孝治氏が説く。
※本稿は月刊誌『Voice』(2019年7月号)、松井孝治氏の「真の野党再生論」より一部抜粋・編集したものです。
2017年総選挙での一人区(定数が1名の選挙区)の選挙結果を見ると、野党が善戦していた地区も少なくなかった。
野党が自民党に代わる政策理念と政策軸を示せれば、参院選でも次期総選挙でも一人区でかなり善戦する可能性はあると思う。しかしいまの野党は無理はしないだろう。
立憲民主党の枝野幸男代表は、マルクス主義の二段階革命論ではないが、第一段階では政権交代を欲張るよりも、野党の盟主としての立場を確立し、第二段階で勝負する。
次の選挙では野党第一党としての地位を確固たるものとして、そのまた次の選挙に向けたことを考えているのだと思う。
枝野氏と福山哲郎氏(立憲民主党幹事長)は、民主党時代に何度もペアでマニフェストを作成されているが、その特徴は、サブマリン的手法にあった。政策立案は徹底して水面下、少人数で行ない、選挙期間直前になって初めて表に出す。
事前にマニフェストの内容が漏れると、他党に真似されたり、内部で批判が起こって収拾が付かなくなったりするからである。枝野・福山両氏は、次の選挙に向けてもその手法、秘密主義を踏襲すると思われる。
ただでさえ旧民主党系政党は凝集力が弱く、対立軸や政策理念を打ち出して内部で揉めると、遠心力が働く。ダブル選挙の可能性もあるなか、党の内部分裂は避けなければいけない。
だから選挙ギリギリの段階になるまで、立憲民主党は公約を打ち出すことはないだろう。合理的戦術ではあるが、これでは支持層のウィングは広がらないし、党内に政策理念が根付かない。
一方、国民民主党は支持率の低迷により焦燥感に駆られたのか、今年4月に小沢一郎氏を取り込んだ。
しかし、合従連衡の象徴である小沢氏が、国民民主党の政策を丸呑みして合流したことで、政策的に何をしたいのかむしろわかりにくくなった。きわめて残念なことに、国民からすれば「また始まった。数を集めれば政策はいかようでもいいのか」という印象だろう。
更新:11月19日 00:05