2018年04月20日 公開
2018年04月22日 更新
福田財務次官(当時)によるセクハラを訴えた女性記者への、テレビ朝日側の対応が波紋を呼んでいます。
私は以前からマスコミに勤める女性の働き方の問題に着目し、メディア企業の「昭和の意識」を改めることが、報道や番組制作の現場のダイバーシティにつながり、ひいては報道のあり方を変え、社会を変えることにもなると提言してきました。
先日発刊した新書『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』(PHP研究所)では、「大手マスコミは働き方を変えられるか? 記者たちの覆面座談会」と題して、大手テレビ局、新聞社で子育てをしながら働く女性記者による座談会を実施しました。
「子宮をとれ」「子ども産んだら終わり」「イヌみたいに二人も三人も産まれたら困る」など、現場での「マタハラ」「セクハラ」発言のオンパレードにちょっと「いつの時代ですか?」と驚いてしまいます。そして「無理しているのってワーママ(ワーキングママ)だけじゃなくて、それを管理しなきゃいけない管理職も、『24時間がんばるマン』の若手も、みんなすごく無理をしている」という現場の悲鳴も聞こえます。
いまだに記者は「夜討ち朝駆け」の男社会
このままではマスコミに優秀な人材が来なくなるというリスクはすでに発生しており、先日地方新聞の経営者が一堂に集まる会議で、経営者の嘆きをたっぷりと聞いたばかり。彼らも危機感は感じている。しかし働き方を変えられないと思っているから「思考停止」に陥ってしまう。
私はその場で「あのー、紙の新聞って毎日出ないといけないのでしょうか?」と物議を醸し出す発言をしましたが、それをきっかけに意見も活発になりました。
彼らの思考停止は『昭和のビジネスモデル」だからこそ起きるもの。現に明治時代は「新聞は2日に1回」だったときもあったと、某新聞社の社長が教えてくれました。
民放連でも働き方改革の講演をしましたが、子育て中の女性記者は、次世代は「Youtube >テレビ」とわかっている。子どもたちを見ているから。しかしテレビ局の上層部にこのリアルな実感はあるのだろうかと思います。
ダイバーシティ&インクルージョンがない場所では、イノベーションもおきないし、さらに「時代の最先端であるはずのマスコミが世間とずれていく」という恐ろしい問題が起きる。今回のテレ朝の対応もその典型的なものではないでしょうか。
広告を作る現場や代理店なども同じような空気がありますから、昨今の「これぐらいはいいだろう」と出すCMが炎上するのも、まさにその「ズレ」が産むものでしょう。
以下に、座談会での、テレビ局・新聞社の女性報道記者による「生の声」の一部をご紹介します。
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(以下、『御社の働き方改革、ここが間違ってます! 残業削減で伸びるすごい会社』より抜粋)
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山口 会社も女性活躍を進めていくために女性をデスクにしたいんですよ。だけど、現場の女性からしたら、そういう働き方のままでデスクになりたくないよね。
青木 そう。できないですよ。私は偉くなるための、その登竜門はくぐれない。これだけ技術が進化しているんだから、編集作業やデスク作業を家でやれるようにしてくださいと言っても聞き入れてもらえない。
小関 男性のガバナンスを脅かすものはダメなんですよ。
白河 そんなことをやっていると、メディアに人材が来なくなると思うんですけどね。現に新聞社の幹部の会で講演をしたら「人材が来ない」というのが悩みでした。本音を言えば、女性の方が優秀だけれど、下駄を履かせて男性を採っていると。業界の中でどこが一番いいかという選択になったら、ワークライフバランスや働き方改革をしているところに殺到しちゃうんじゃないかな。
山口 だから、「今がチャンスですよ」と上の人に言っているんだけど、響かない。
青木 応募者の半数以上が女性になっているんだから、デスクの仕事の仕方を変えないでどうするつもりなのかな。
白河 「仕事が好きな女は子どもを産まない」くらいに思っていますよね。
山口 「記者なんだから、イヌみたいに二人も三人も産まれたら困るよな」と言った人もいる。
更新:11月23日 00:05