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再生可能エネルギー拡大は地域活性化に繋がるか

2012年11月12日 公開
2024年12月16日 更新

金坂成通(政策シンクタンクPHP総研地域経営研究センターコンサルタント)

  7月から、再生可能エネルギー(再エネ)の利用推進を期待された、固定価格全量買取制度(FIT)が施行されている。太陽光、風力、水力などの再エネを用いて発電された電気を、国が定める価格で、一定期間、東京電力などの電気事業者が買い取ることを義務付けるものだ。電気事業者が再エネ電気の買取りに要した費用は、電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」でまかなわれる。電気使用量が月300kW、電気料金約7千円の標準家庭の場合、約87円が上乗せ再エネ賦課金だ。

 FITで再エネはどの程度進むと予想されていただろうか。2012年度の導入見込みで250万kWの上乗せが見込まれていた。2011年度時点での導入量は出力ベースで約1945万kWであったため、1年で13%近く伸びる「成長産業」と位置づけられていたわけだ。

 では実際、FIT開始後の導入量はどの程度になっているだろうか。経済産業省によると、9月末までの再エネの認定設備数は約11万件、導入量は約178万kWとなった。導入量トータルでは、初年度導入目標の7割を3ヶ月で達成したことになる。そのうち、太陽光が約148万kW、風力で29万kWなどが主なもので、8割以上が太陽光で占める。なかでも、非住宅用太陽光が目標50万kWに対して、約2倍の約104万kWに達している。

 地域別にはどうだろうか。再エネ全体では、北海道が42万kW、九州が32万kW、中国約21kWなど、関東以外が出力の8割以上を占め、再エネの利用が「地域分散」で進んでいることがわかる。再エネ産業は、地域に存在する資源を活かすもので、地方にとって新たな1次産業になりうる。その視点からは地方での拡大は望ましい状況といえる。しかし、導入量に占める大規模な太陽光発電事業(メガソーラー)の比率をみると、北海道で69%、九州で55%、中国で46%など、地方ではメガソーラーがその多くを占めている。

 メガソーラーは、大規模な工場用地に導入するものや、経営資源に余裕がある上場企業が新規参入するものなど、東京に本社を置く上場企業が主導するものが多い。再エネ普及に伴う国民の負担は大きく、2017年度には標準家庭で月額約400円まで上昇する見込みだ(電気中央研究所の朝野賢司氏による予測)。このままでは、再エネで利益を得るのは都市部に本社を置く上場企業が中心となり、地方の住民は再エネ推進の費用を負担するのみになりかねない。
 

 地方自治体も、FITを過去に造成した工業団地・産業用地のメガソーラーによる活用好機と捉え、企業誘致の計画を次々立ち上げている。しかし外部の大企業を誘致するだけでは、地域にとってわずかな雇用と地代収入、固定資産税を得るのみである。確かに遊休地の処分は、早期に取り組むべき課題だが、単にメガソーラーを誘致するだけでは勿体ない。

 再エネ事業は安定した売電収入が得られるにも関わらず、地域住民や地域事業者を主体とする再エネ事業の多くは、資金調達が出来ず、再エネ事業に関わることが困難な状況にある。単純に信用力の面では上場企業に劣るからである。自治体は、地域活性化の観点から、遊休資源の再エネ利活用などを、地域の企業や資金を含んだスキームで実施すべきだ。そのような好例は、最近では高知県土佐清水市の市民ファンドによるメガソーラー、宮崎県川南町の地元ガス会社中心のメガソーラー、京都市の市民出資による太陽光発電の公共施設屋根貸し事業などに見られる。

 再エネ事業を、持続可能で地域経済活性化に資する事業にできるかどうかは、地域の企業、住民、自治体、金融機関が上手く連携していけるかにかかっている。なかでも、自治体の果たす役割は大きい。PHP総研はこの10月に「政策提言 地域主導型再生可能エネルギー事業を確立するために」を発表した。提言では、自治体に求める政策を8つの提言としてまとめた。詳細は、PHP総研のホームページに掲載した提言をご高覧願えれば幸いである。(http://research.php.co.jp/research/local_governance/policy/post_29.php

 ★研究員プロフィール:金坂成通 <外部サイト>

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