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西野ジャパンの快進撃を支えたのはハリルホジッチ前監督だった?

2018年07月06日 公開
2019年01月30日 更新

宇都宮徹壱(ノンフィクションライター) 

ロシア・サランスクにて、日本対コロンビア戦当日の様子©tete_Utsunomiya

 

なぜ「サランスクの奇跡」を起こせたのか

W杯開幕2カ月前に監督を交代するドタバタぶりで、しかも本番までのテストではなかなか結果が出ず、国民的な期待感もほとんどなかった日本が、なぜここまでの順調なスタートダッシュを切ることができたのだろうか。

まず、選手のコンディショニングの成功。今回、とりわけ「コンディション的に間に合うのだろうか?」と懸念されていたのが、香川と乾であった。しかしフタを開けてみれば、いずれもコロンビア戦までにはトップフォームを取り戻し、今回の快進撃の大きな原動力となっている。

次に、本番ギリギリまでの選手の見極め。ガーナ戦、スイス戦での連敗を受けてのパラグアイ戦で、西野監督はあえて「出番のない選手にもチャンスを与える」ことを決断。

これが、奇跡を起こすメンバーのベースとなったわけだが、とりわけ柴崎をチームの中心に据えたことの意味は大きかった。おそらく彼は4年後のカタール大会まで、日本代表の中心選手として君臨することだろう。

そして「受け身にならない」という基本姿勢。じつのところ大会前は、現実的な西野監督が守備的な戦い方をするものと予想していた。ところが実際には、どんな相手に対しても「受け身にならない」ことを指揮官は選択し、それが結果に結び付いた。

たしかに今大会は、いくつかの幸運に恵まれた部分はあった。その幸運を引き出したのが、西野監督のチームマネジメントと采配であったことは紛れもない事実である。

しかし、そのベースとなるものが、すでに日本代表に内在されていたことも留意すべきであろう。セネガル戦で顕著だった一対一での勝負強さは、前任のハリルホジッチ監督がチームに植え付けたものであるし、柴崎を最初に積極的に起用したのは、さらに前任のハビエル・アギーレ監督であった。

そうした積み重ねがあっての、今回の快進撃であることは、ゆめゆめ忘れるべきではない。とりわけ、後味が悪いかたちで代表監督の任を解かれたハリルホジッチに対しては、大会後にJFAとしての誠意ある謝意の言葉が発せられるべきだと、個人的には考えている。〈文中敬称略>

(本稿は『Voice』2018年8月号、宇都宮徹壱氏の「ハリルホジッチの遺産」を一部抜粋、編集したものです)

著者紹介

宇都宮徹壱(うつのみや・てついち)

ノンフィクションライター

1966年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。著書に、第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞の『フットボールの犬―欧羅巴1999‐2009』『J2&J3 フットボール漫遊記』(いずれも東邦出版)など。有料ウェブマガジン『宇都宮徹壱WM』(https://www.targma.jp/tetsumaga/)を配信中。

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