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仕事への情熱はないほうがいい? 調査で見えた、いまの若手が求める「理想の上司像」

2023年04月06日 公開
2024年12月16日 更新

金間大介(金沢大学融合研究域融合科学系教授)

金間大介 理想の上司

昨今の若手社員は、仕事に情熱をもっていて叱ってくれる上司を求めていない――。金沢大学融合研究域融合科学系教授で、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』が話題となった金間大介氏が、いまの若者が求める理想の上司像をデータからひも解く。

※本稿は『Voice』2023年4月号より抜粋・編集のうえ、一部加筆したものです。

 

部下のために動いてくれる上司・先輩が急上昇

図 理想的だと思う上司や先輩

いまの若者にとっての理想の上司像とは何か。日本能率協会の「2022年度 新入社員意識調査」を参照してみよう。名前のとおり、このデータは新しく、2022年4月に回収されている。最大の特徴は、なんといっても新入社員が対象ということだろう。

そのなかから、「あなたが理想的だと思うのはどのような上司や先輩ですか」(上位3つ選択)の集計結果を示したのが図である。この図の興味深いところは、経年変化があることだ。ここ10年間、そのときの新入社員がどのように感じていたかが見てとれる。

まず目に飛び込んでくるのは、どの時代においても「仕事について丁寧な指導をする」が1位ということだ。しかもこの10年で、その割合はおよそ20ポイントも増加している。

2022年にいたっては、10人のうち7人がこれを理想とする状態だ。このようなトレンドから、僕は「現在の若者こそ指示待ち傾向が顕著」だと考えている

このほか、10ポイント以上の顕著な変化を示している項目に矢印をつけた。

「仕事について丁寧な......」ともう一つ、急上昇しているのが「部下の意見・要望に対し、動いてくれる」だ。ご覧のとおり、ほぼ倍増している。何というか、これを論じだすと、ひと悶着ありそうだ。

だからいま、このまま筆を進めるか、ちょっと迷うところ(だって「動いてくれる」って...。「聞いてくれる」ならまだしも)。

ちなみに、「聞いてくれる上司・先輩」は「動いてくれる上司・先輩」の2項目上に、ちゃんと存在している。こちらは10年間で微減の傾向にあって、もはや「動いてくれる」が逆転しそうだ。

もう間もなく、上司や先輩は、聞くだけではなく、動かなければ部下の期待に応えられない時代となるかもしれない。

 

仕事の結果に情熱をもつ上司は敬遠される

さて、(何とか)気を取り直して、逆に減少トレンドの項目も見てみよう。

その筆頭格として、「場合によっては叱ってくれる」が半減している。この点だけでも興味深いが、さらに急降下しているのが「仕事の結果に対する情熱を持っている」だ。この項目、2012年には上から数えて3番目の支持を集めていたのだ。それが2022年には10番目。いったい何が起こっているのか。

上司が仕事の結果に熱意をもつことが、なぜそれほどまでに現在の若者に敬遠されるのか。

その解釈を助けるキーワードは「意識高い系」「圧」「安定」だ。

いまの若者の多くは、意識高い人たちを「あっち系の人」などといって距離をとる傾向がある。彼らは自分たちとは違う世界の人たちであり、そんな人を上司や先輩にもつと、おのずと自分にも「圧」がかかる。そんな状態こそ「安定」した職場とは真逆に位置し、警戒すべき対象となる、というのが僕の解釈だ。

もう一つ、ぜひ注目してほしいポイントは、最下位となった「仕事を任せて見守る」だ。もともとの支持率が低いので大きな変化には見えないが、2020年以降では、これを理想の上司・先輩とする新入社員は100人に5人のみだ。

もう「背中を見て学ぶ」なんて時代じゃないのは、どんなに「おじさん」と呼ばれるような立場の人でもご案内のことと思う。さすがにそんな職人気質的な上司は、もう絶滅危惧種なのかもしれない(正確には危惧されていないので、単純に絶滅種と言うべきか)。

そのほか、些細ではあるが、「仕事の結果に対するねぎらい・褒め言葉を忘れない」は、徐々に上昇していたが、直近の2022年では一転して低下傾向にあるのが興味深い。

さて、以上をまとめると、もういまの新入社員にとっての「理想の上司・先輩像」には結論が出ている。それは、

1. 仕事について丁寧かつ具体的なアドバイスをくれて、
2. 若者の意見や要望に対し(聞いてくれるだけではなく)自ら動いてくれて、
3. いかなる場合でも叱るなんてとんでもなく、
4. 仕事の結果に決して情熱などもたず、
5. 仕事を振っておいて見守るだけなんてありえない。

といったところか......。もはやツッコミどころが多すぎて、逆に言葉が出てこないレベルだ(笑)。もちろん僕も「積極的にこういう上司をめざそう」なんて言う気はまったくない。

それよりも、まずはこうして可視化し、おいおい、と共に笑い、そのうえで先に進む方法を考えてもらえればと願っている。

 

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